1.はじめに
一般的に、鉄道路線は地図に掲載されています。もちろん地下鉄も同様ですが、実は地図に掲載されていない地下鉄トンネルがいくつもあります。
国会議事堂の近く、木々が茂っていて静かな国会前庭の下にも「地図に載っていない地下鉄トンネル」があります…
2.「8,9号線連絡側線」
地下鉄に限らず、鉄道車両は定期的に分解検査・修理・整備をする必要があります。東京メトロの千代田線、有楽町線、南北線の定期検査は綾瀬にある工場(千代田線北綾瀬駅の北方)で実施しています。そのため、南北線⇔有楽町線、有楽町線⇔千代田線、というふたつの「車両回送用の線路(トンネル)」が存在します。
ひとつめの南北線⇔有楽町線連絡線路は、市ヶ谷駅にあります。↓
【地下好きの方へ】トンネルが外濠の下でねじれているお話
もうひとつは「8,9号線連絡側線」と称し、千代田線(9号線)霞ヶ関駅と有楽町線(8号線)桜田門駅の間にあります。この連絡側線は単線で、霞ヶ関駅の西側で千代田線B線(北綾瀬方面行)から分岐します。その後半径167m右曲線で国会前庭和式庭園の下を走り、国会前庭洋式庭園をかすめて有楽町線の桜田門駅に至ります。
連絡側線は上記の通り千代田線B線から分岐しているため、北綾瀬方面からやってきたA線の電車は霞ヶ関駅東側にある両渡り線を通って霞ヶ関駅のB線に進入し、そこから連絡側線に入ります。有楽町線の桜田門駅西側にはシングルスリップがあり、そこを通過して有楽町線A線に入って行きます。
反対に有楽町線B線からは桜田門駅西側のシングルスリップで連絡側線に入り、霞ヶ関駅西側で千代田線B線に合流します。
写真1は国会前庭周辺の路線図ですが、千代田線、有楽町線およびその連絡側線、さらに丸ノ内線が地下を走り回っています。それだけでなく、首都高速都心環状線が南北方向に走って上記すべての路線と交差しています。
3.地上風景
さて、それでは8,9号線連絡側線の上にはどのような風景が広がっているのか…現地の状況をご紹介します。
写真2は潮見坂で、左は財務省、右は外務省です。ここは千代田線霞ヶ関駅の西になり、真下には千代田線とその折返し線があります。A線の電車は私の足元から奥に向かっています。8,9号線連絡側線はB線(右側)から奥に向かって分岐していきます。
写真3は、潮見坂を登り切ったところにある財務省上交差点です。この交差点の地下を左右方向に首都高速都心環状線が走っており、連絡側線はその下を写真奥から左手前に向かってきます。首都高速都心環状線トンネルと連絡側線の上下方向離隔は6~7mです。
私の足元あたりから連絡側線の半径167m右曲線が始まります。
財務省上交差点から国会前庭和式庭園に入ると、官庁の街から一気に緑の世界に変わります。この公園の地下を連絡側線が走っているのですが、そのような雰囲気はありません。連絡側線は全長570m程度の短い単線シールドトンネルなので、途中に換気口もありません。
写真6も国会前庭和式庭園です。丸ノ内線が奥から手前に向かって走っており、連絡側線はその12.4m下を写真右から左奥に向かって走っています。
写真7は国会議事堂です。連絡側線は左側に見える国会前庭和式庭園から国会議事堂正面の道路に飛び出し、さらにこの道路の右側にある国会前庭洋式庭園に入り込みます。
国会前庭洋式庭園には、水準原点標を保護するための建物(写真8)があります。ご覧の通り小さなものですが、ローマのオーダーのひとつであるトスカーナ式オーダーを持つ本格的なもので、東京都指定有形文化財に指定されています。連絡側線はここから30mほど離れたところを走っています。
もうひとつ、国会前庭洋式庭園には井伊家上屋敷の「櫻の井」もあります。1860年3月3日、大老井伊直弼がこの井戸の脇から江戸城に向かう途中で殺されてしまいました(桜田門外の変)。この井戸は東京都指定旧跡になっています。
写真10のあたりで、連絡側線は有楽町線に合流し、桜田門駅に向かっています。写真右の塔がある建物は、桜田門交差点に面して建っている警視庁です。
写真11および12は、連絡側線が桜田門駅の手前で有楽町線のA線B線に合流する状態です。連絡側線はまずB線にシングルスリップで合流し(写真12)、その後A線に合流しています(写真11)。
4.まとめ
千代田線霞ヶ関駅と有楽町線桜田門駅の間には、地図に掲載されていない「8,9号線連絡側線」があります。木々が茂っている国会前庭の地下を走っており、丸ノ内線、首都高速都心環状線と交差しています。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。