国鉄10系気動車の台車と乗り心地

写真1 DT19

写真2 台車中央部拡大

 10系気動車は1950年代前半に製造されましたが、動台車がDT19(写真1参照)、付随台車がTR49です。外観はほとんど同じです。いずれも、液体式の試作車であるキハ44500形から採用された標準動台車です。構造の簡略化と保守の容易化を目的としたため、枕ばねが省略されています。一般的な台車であれば上揺れ枕と下揺れ枕の間に枕ばねがあるものですが、写真2を参照するとわかる通り、この台車の場合は防振ゴムが入っているだけです。車側から見えているのは防振ゴムではなく、そのカバーです。

写真3 TR29

 国鉄関係者が記した文献には「振動特性は相当良好である」という記述がありますが、決して乗り心地はよくありませんでした。ブレーキ時は乗り心地がいちだんと低下したものです。TR29(写真3参照)は戦前の設計製作ですが、枕ばねがあるのでDT19やTR49よりも良好な乗り心地でした。

 DT19、TR49の乗り心地の悪さはそのうち受入れられなくなり、10系気動車に続いて製造されていた55系気動車および20系気動車いずれも、増備途中からきちんとした枕ばねがあるDT22、TR51という台車に設計変更されたのでした。

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 乗り心地というものは関係者の主観的意見で良否が決められるようなものではありません。国鉄で「乗心地基準」が制定されて5段階評価(客観的評価)されるようになったのは1963年のことです。

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さかてつでした…