北海道の雄別鉄道からやってきた気動車…関東鉄道キハ813形…トマソン的物件を有する車両

 怪盗ルパンシリーズに『813の謎』という物語がありました(今もあると思います)。話の中身はよく覚えていませんが、犯人に殺された人がどこかに「813」と書き残していて、それが事件を解決する重要な鍵だった…というようなお話です。

 …で、その物語とは全く関係ないのですが、関東鉄道にキハ813形キハ813という1形式1両の気動車が存在しました。出身は北海道です。雄別鉄道の竣工図表によると1969年7月にキハ106として登場しました。ところが形式がキハ49200形になっています。また当時の写真を見ると片運転台なのに、竣工図表の中の形式図は両運転台(要するにキハ104~105と同じ)だったり、どう見ても「こりゃ間違いだろう」という内容でした。しかしキハ106に関して現在参照可能な文書はそれだけなのです。

 さて、せっかく新製されたキハ106でしたが、雄別炭礦が1970年2月に閉山(倒産)し、それに続いて鉄道線も4月に廃止されてしまいました。登場してから失業するまで1年もなかったのです。そして、キハ49200Y1~3、キハ104~105と共に、関東鉄道に再就職したのでした。

写真1 キハ813

写真2 キハ813

 写真1と写真2は関東鉄道キハ813です。キハ810形キハ811~812(元 雄別鉄道キハ104~105)に続いた車番ではありますが、運転台が片方にしかないということで形式が分けられ、常総線に投入されました。ちなみにキハ811~812の投入先は筑波線(→筑波鉄道)です。

 ところで、写真1を見て妙なことに気付きませんか? いちばん後位の輪軸の真上の車体裾に四角い穴とふたがあるのです。これは戸袋掃除口で、引戸の戸袋に設けられるものです。ところが、ここに引戸はありません。街中におけるトマソンのようなものです。キハ813のトマソン的物件「戸袋掃除口」はしばらく謎でした。

 ある日、書泉グランデの棚の『雄別炭砿閉山50年 雄別・尺別・上茶路』という本に目が留まりました。これは釧路市立博物館で開催された展示会の内容をまとめたもので、同博物館発行です。北海道の書物が簡単に手に入るところが書泉グランデのすごいところですね。購入して家でぱらぱら眺めていると、1枚の写真に目が釘付けになりました。キハ106です。そして…謎が解けました。解答ルパンもしくは解凍ルパンという気分です。ただし小さい写真で細部がよく見えません。

 さて…どうしたものか…ということで、釧路市立博物館に事情を伝えて申請したところ、ありがたいことに当該写真を電子書籍の説明用として使用することの許可をいただくことができました。さらに『釧路炭田 炭鉱と鉄路と』という書籍にもキハ106の一部の写真が掲載されている旨、情報をいただけました。

写真3 構体下部構造

 さて、両書籍に掲載されたキハ106写真の細部を見ていくと、いろいろなことがわかります。また『鉄道ピクトリアル2022年2月号』記載内容からも情報が得られました。これらをまとめると、キハ106の後位(客室扉より後寄り)にはボックスシートと車掌室と便所と荷物室があったこと、戸袋掃除口は荷物室扉(引戸)のものだったこと、荷物室扉下部とその後位には外板が貼られていなかった(側梁むき出しだった)こと…などが判明しました。(より深くお知りになりたいお方には発売中の『関東鉄道グループの気動車 雄別から来た仲間たち4』をお勧めいたします。キハ106後位の推定写真を作成・掲載してあります。)

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 このように特徴的な構造を有していたキハ106でしたが、関東鉄道にやってきてから平凡な構造に改造されてキハ813形キハ813となりました。客室扉の後位(写真1)に写っている窓の大きさと配置がばらばらという点がキハ106の名残です。

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さかてつでした…