ものづくりに限った話ではありませんが、物の状態をきちんと認識することはとても大切です。漫然と見ていても脳は理解していないものです。
ある日、羽田空港の展望デッキでB737を見ていたら、写真1のごとく、操縦席前方にボルテックスジェネレータ(コの字形の小さな部材10個)があるのに気が付きました。「最近、B737にはボルテックスジェネレータが取付けられるようになったのか…」と思いました。
家に帰ってきてから調べてみたら、B737に関しては20年以上前に登場したシリーズからボルテックスジェネレータが取付けられていました。あれ?と思って過去の写真を調べてみたら、7年前に某空港で撮影した写真(写真2)にちゃんとボルテックスジェネレータが写っています。
操縦席前にボルテックスジェネレータが取付けられたB737を過去に撮影までしていました。当然、私の眼の網膜にはその画像が写っていたわけです。しかしボルテックスジェネレータの有無を意識して見ていなかったため、私の脳はその存在を認識していなかったのでした。
『心ここにあらざれば視れども見えず』とはうまくいったものです。「見えている」だけでは「認識できている」に程遠い状態です。「視る」「診る」さらには「物の状態を指差しして声に出しながら確認する」ぐらいしないと「脳の認識」まで結びつかないものです。
さかてつです…
【参考】ボルテックスジェネレータとは
固体の表面を流体が流れている時にこの流れが剥離すると、騒音や振動の原因になると共にそれによる損失で流路抵抗が増加するなどの問題が発生します。たとえば飛行機の主翼表面における空気の流れが剥離すると揚力が失われ、非常に危険な状態になります。また機体表面形状変化が滑らかでない場合、流れが剥離して騒音発生や抗力増加につながることがあります。このような場合、意図的に流れに小さな乱れを発生させてやると、大きな剥離につながらなくなる(改善される)ことがあります。ボルテックスジェネレータはこの小さな乱れを発生させるためのものです。
そもそも流れの設計が完璧ならこのような小細工をする必要はないのですが、なかなか世の中うまくいかないこともあります。また原価低減などを考慮すると、多少騒音や抗力が大きくなるとわかっていても、操縦席前方と側方の窓は平面にした方が有利…という考え方もありますね。その場合、次善の策としてボルテックスジェネレータを追加することがあります。
以上
さかてつでした…