ものづくりにおいては日常的に数値を扱います。相手に対して「ある入力に対して出力はどうなるか」という説明をするのもごく普通のことです。「入力Xに対する出力YはY=2Xで示される」という簡単なものであれば「出力は入力の2倍である」という文章で十分ですし、その一言で直感的に理解できると思います。しかし現実にこんな簡単な事例はまずありません。
技術的な話だとその技術的意味に関する説明が必要になるので、ここでは所得税を例にしてみます。課税所得を入力、税額を出力として「課税所得に応じて税額がどのように変わるか(どのように設定されているか)」ということを調べてみたいと思います。
(注記:数値は便宜上現在のものに統一してあります。各時代の税法と合致しているわけではありませんのでご注意ください。)
【1】直感的にわかりにくい表現(厳密さはあるが…)
これは昔、申告用紙の枠や文字が薄茶色で印刷されていた時代の書き方です。
求める税額=A×B-C
A課税される所得金額 B税率 C控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円から 45% 4,796,000円
⇒課税所得に応じてBとCを求め、それを上記の式に代入することが求められます。もちろん厳密な金額は計算できますが、課税所得に応じて税額がどう変わるか直感的に理解することは困難です。
【2】改善されているが直感的にわかりにくい表現(厳密さはある)
これは現在の申告用紙の書き方です。
所得金額の合計A
所得から差し引かれる金額の合計B
差額金額A-B(千円未満の端数切捨て)C
Cの金額 課税される所得金額に対する税額
0円 0円
1,000円~ 1,949,000円 C×0.05
1,950,000円~ 3,299,000円 C×0.1-97,500円
3,300,000円~ 6,949,000円 C×0.2-427,500円
6,950,000円~ 8,999,000円 C×0.23-636,000円
9,000,000円~ 17,999,000円 C×0.33-1,536,000円
18,000,000円~ 39,999,000円 C×0.4-2,796,000円
40,000,000円~ C×0.45-4,796,000円
⇒課税所得に対応した計算式が記されているので、【1】より多少わかりやすいかもしれません。厳密さも維持されています。ただし、課税所得に応じた税額を直感的に把握できないことには違いありません。なお細かい話ですが、文字BとCの使い方は【1】と異なっています。
【3】直感的にわかりやすい表現
グラフ化しました。
⇒一目瞭然とはこのことですね。グラフの威力だと思います。課税所得に対する税額がどうなっているか、直感的にわかります。その一方で、このグラフだけで厳密な税額を求めるには無理があります。
「入力が定まっている場合の出力を計算する」だけなら【1】【2】の方が厳密でよいと言えますが、「ある入力に対して出力はどう変化するか(どう設定されているか)」を相手に理解してほしいのであれば【3】にしないとダメですね、グラフ化するに際してそれなりに手間はかかりますが…(VLOOKUP関数で遊ぶことになってしまいました)。
裏返すと、相手に直感的に理解してほしくない場合は一覧表に留める、あるいは文章で記すという手がある…ということでもあります。
以上
さかてつでした…