理系だからこそきちんとした文章を書こう

 世の中ではよく、文系と理系という区分をします。そして「私は理系だから文章は苦手だ」という人が結構いますが、本当にそれでよいのでしょうか?

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 私が設計担当者だった頃の話です。

 あるお客様から20年ほど使用した製品が返送されてきました。動作がぎくしゃくして調子が良くないとのことでした。返送されてきた現品を調査したところ、ある部品が摩耗変形していました。20年も使用すれば当然の話です。調査報告書に「部品が変形していたので良品と交換修理いたしました」と記載し、現品とともにそのお客様に送付しました。

 何日か経って、お客様から「ほかにも同様の製品がたくさんある」と連絡が入りました。後日、別件でそのお客様のところへおじゃました際、「同様」と称する製品を直接見せていただきました。確かに部品が摩耗変形しています。しかし、どれもこれも20年前後使用品とのことで、摩耗変形するのは当然です。

 そこでお客様に「もう20年前後使用なさったわけですから、新しい部品を購入して交換してください」とお願いしました。ところがお客様は「以前いただいた報告書には『良品と交換修理した』と書いてある。つまり、もともと良品ではなかったわけだから、無料で良品と交換してください」と言われました。お客様の解釈が私の伝えたかったことと食い違っていたため、押し問答のようになってしまいましたが、結局最後まで『良品と交換修理した』という表現に関して納得していただけませんでした。

 出張の翌日、上司に経緯を報告したら、「お前が中途半端な報告書を書くからこんなことになるんだ。『良品と交換』ではなく『長年の使用に伴い摩耗していたので新品と交換した』と明記して、さらに『部品を定期的に新品と購入・交換することをお勧めします』と書いておけば部品の商売につながったのに!」と叱られました。

 全くその通りで、誰だって自分にとって有利な解釈をします。文章の書き方が適切でないと、とんでもない齟齬が生じます。お客様と設計者の「境目」で、意思がきちんと伝わらなかったという事例です。

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 理系であっても、考えていること、思っていることを的確に相手に伝えることは重要です。まず、日本語を勉強することが大切だと思います。さらに文章は書きっぱなしではなく、他の人に読んで確認してもらう、あるいは自分自身で確認する場合でも数日間放置してから確認する(=「他人の目」になってから再確認する)、等が重要だと思います。 

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さかてつでした…