【新宿区と文京区の境目】基準点記載の区が所在の区ではないというお話

 引続き神田川の支流である蟹川の跡の区境に関してです。

1.空中写真

写真1 2019年撮影

写真2 1947年撮影

【注記】本書掲載の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」の写真データを著者が編集・加工したものです。

2.現地の状況

写真3 合流箇所(⑤地点:2012年)

写真4 合流箇所(⑤地点:2022年)

 蟹川の支流跡である区境は、写真3および写真4の左奥から右手前に走っています。私が立っているあたりが蟹川支流同士の合流点です。しかし、区境を明確に示すものは見つかりませんでした。

写真5 区境(2012年)

 写真5は、写真3および写真4を撮影した場所で体を右に90度回して眺めた状態です。東(写真5では奥)に続く道が、蟹川跡兼区境です。

写真6 区境

写真7 基準点

 写真6は写真5の10年後(現在の状況)ですが、よく見ると角にある黄色い柵の前の路面に基準点(写真7)が設置されています。

 国土地理院の「基準点成果等閲覧サービス」で検索してみると、これは公共基準点の「その他」に分類されるものであることがわかります。さらに詳細情報を調べると「所在地:東京都文京区」と出てきました。その一方で「計画機関名:東京都新宿区」となっています。「公共測量作業情報」の解説を読むと、この基準点を使う際には新宿区に承認申請する必要がある旨記されていました。

 つまり「新宿区管理のものが文京区にある」わけで、写真7の地点は文京区ということになります。「新宿区」と記されていてもそれを鵜呑みにしてはいけないわけです。いかにも境目らしい、ややこしい状態です。写真6の黄色い柵の脇には新宿区の町会用掲示板があるので新宿区だと思いますが…。

写真8 区境(⑥地点)

写真9 基準点

 写真8は蟹川跡を下流方向に進んだ⑥地点の区境風景です。写真9は写真8の側溝付近拡大ですが、この基準点に関しても同様に調べると、写真7と同じく「文京区にある新宿区管理の基準点」でした。道路の中心が区境なのかどうかまではわかりませんが、少なくとも写真9の場所は文京区ということになります。

写真10 区境(⑦地点)

写真11 境界標

 さらに下流方向に進んだ⑦地点の状況を写真10に示します。右側に文京区の住居表示板(黄緑色)が見えます。この道路も文京区なのだろうかと思って路面をよく見ると、ブロックに半分隠れた新宿区の境界標がありました(写真11)。

 ところで、ここは蟹川が北に進路を変えていたあたりです。川は直角に曲がるものではないので、蟹川の跡が宅地に入り込んでいる可能性があります。道路と共に宅地の一部も新宿区なのかもしれません。文京区の住居表示板がありますが、この宅地すべてが文京区であることを示すわけではありませんから…。

写真12 蟹川跡

 写真12は⑦地点の少し北側です。右側に写っている建物の住居表示は文京区側になっていますが、「北半分が文京区、南半分が新宿区」の可能性も大です。両区の境界標がないため、特定できませんでした。

 蟹川跡は北(写真12では奥)に向かって神田川に向かっています。

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 基準点に記された区名、住居表示板、これら現地の状況だけから区境を特定するのはなかなかむずかしいものだと思います。厳密に特定するのなら登記されている内容を確認すればよいのでしょうが、まあそこまでやることもないでしょう。

 とにかく、奥が深い世界であることには違いありません。

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さかてつでした…