仮台車として生き延びた偏心台車

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写真1 検査前洗浄風景

 鉄道車両は安全確保のため、定期的に検査されます。車両は汚れていますから検査前に洗浄します。写真1は鹿島鉄道キハ600形で、蒸気を使って床下洗浄しているところです。台車ももちろん定期検査の対象ですから、取外します。その間車体を何かで支持しておく必要があるのですが、この時は仮台車を用いていました。注目していただきたいのはこの仮台車の構造です。

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写真2 仮台車(偏心台車)

 一般的に台車は心皿(台車の回転中心)から前後の輪軸までの距離が等しいものですが、この仮台車(写真1および写真2)は輪軸までの距離が前後で異なっています。そして距離が短い方の車軸には歯車が取付けられています。

 実はこれ、気動車の動台車として使われていたのもで、歯車は逆転機の名残です。台車中心が偏っているので偏心台車と称します。動軸の荷重を増やし、空転しにくくすることが目的です。戦前の気動車に採用例が結構あり、廃車になったのちも台車だけが残っていたのでしょう。具体的にどの車番のものだったのかは不明です。

 なかなか貴重な存在でしたが、鹿島鉄道消滅と共に消え去りました。

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ちかてつ
さかてつでした…