1.はじめに
都営地下鉄三田線神保町駅-大手町駅間の経路特定全体過程を【地下鉄好きの方へ】三田線神保町駅-大手町駅間の経路特定手順に記しましたが、今回は「トンネルの真上とその周囲の建物が、三田線トンネルに悪影響を与えないようにどのような工夫しているか」というお話です。
写真1および写真2は、三田線神保町駅-大手町駅間のうち、道路下から外れて走っている区間です。前回もお話ししましたが、青い区間は開削工法、黄色い区間はシールド工法で建設されました。
2.建物⑦~⑬は三田線トンネルの上か否か
まず、建物⑦~⑬の位置関係と、それぞれが三田線トンネルの上か否かについて記します。
写真3および写真4は、建物⑦~⑩が面している道路を東から西に向かって撮影したものです。写真3には建物⑪および建物⑫の背面、さらに建物⑬の一部も写っています。三田線は両写真の右奥から左手前に向かって走っています。
写真2と対比するとわかりますが、建物⑨と建物⑩は三田線トンネルを避けて建てられています。建物⑪はその大半が三田線トンネルを避けて建てられています。一方、建物⑦と建物⑧、そして建物⑫は三田線トンネルの真上です。
写真5および写真6も、建物⑦~⑩が面している道路の風景です。こちらは逆に西から東を見たところです。三田線は両写真の左手前から右奥に向かって走っています。
写真6奥に見える建物⑬は、三田線トンネルを避けて建てられています。一方、手前に並んでいる3~4階床の低い建物(建物番号無し)は、いずれも三田線トンネルの真上です。
写真7は、錦町河岸交差点から北西を見た風景です。写真奥から私の足元に向かって三田線が走っています。
建物⑩と建物⑬は三田線トンネルを避けて建てられています。建物⑪はその大半が三田線トンネルを避けて建てられています。建物⑫は三田線トンネルの真上です。
3.三田線トンネルを避ける工夫
次に、三田線トンネルを避けている建物が「どのようにしてトンネルとの干渉を避けているか」記します。
3.1 建物⑨の工夫
建物⑨(写真8)は12階床の集合住宅で、2018年4月竣工です。空中写真(写真2)を見ると、三田線トンネルは建物⑨の敷地と干渉しています。
しかし、建物⑨の基礎は三田線トンネルと干渉していないのです。写真8を見ると建物下部は斜めに欠き取られており、2階より上はオーバーハングしていることがわかります。
写真2は2017年8月(建物⑨の竣工8か月前)撮影で、建物⑨が基礎工事中です。基礎が三田線トンネルを逃げるように斜めになっていることがわかります。基礎斜め部と三田線トンネル位置はぴたりと一致します。
「基礎は三田線を避けた形状、上部はオーバーハング」が建物⑨の工夫です。
3.2 建物⑩の工夫
建物⑩の場合は比較的簡単な手法です。写真3からわかるように「基礎から建物上部まで欠き取り」により、三田線トンネルとの干渉を避けています。
3.3 建物⑬の工夫
建物⑬は12階床の貸事務所で、1971年竣工です。三田線トンネルとほぼ同時に建設されたことになります。
この建物⑬の敷地は三田線トンネルと少し干渉しています。しかし、写真6よりわかるように、非常階段部分以外の建物本体をひと回り小さくしてトンネルを逃げています。実はこれでも建物本体の南西角がわずかに三田線トンネルと干渉しているのですが、貸しビルのサイトで間取りを調べてみると、柱が建物本体の両隅から1~2mほど内側にずれていることがわかりました。
「建物形状と柱の位置で三田線を避ける」が建物⑬の工夫ということになります。
3.4 建物⑪に関して
建物⑪の場合は大半が三田線トンネルを避けていますが、北東の一部がトンネルと干渉しています。
建物⑪は9階床ですが、写真3よりわかるように「三田線の直上は非常階段にして荷重を減らす」という方法を採っています。
4.三田線トンネル真上の建物の工夫
さらに、三田線トンネルの真上にある建物に関して、「どのようにしてトンネルに対する荷重を抑制しているか」記します。
そもそも三田線のシールドトンネル自体、ダクタイル鋳鉄(強度の大きい鋳鉄)製のセグメント(トンネル形状を保つための円弧状の枠)を用いて強度が大きくなっています。しかしそれだけでなく、三田線トンネル上に建つ建物も下記のようにいろいろ工夫されていることがわかりました。
4.1 建物⑦の工夫
建物⑦(写真4)はナインアワーズ(https://ninehours.co.jp/otemachi/)というカプセルホテルです。特徴的なのはその平面形で、コの字形(中央付近に大きな吹抜けあり)なのです。
一般的に5階床程度までの建物なら、その真下の地下鉄トンネルに悪影響を与えることはまずありません。しかし、この建物のように8階床あったとしても、「建物の中央付近を大きく吹抜けにして建物の幅を狭くする」ことにより、三田線トンネルに対する荷重を小さくできているのではないかと思われます。
4.2 建物⑫の工夫
建物⑫は7階床の貸事務所です。鉄筋コンクリート構造で7階床だとトンネルに対する影響は厳しいなぁ…と思いましたが、貸しビルのサイトで調べてみたところ、「軽量鉄骨構造」であることがわかりました。なるほどという感じです。
5.まとめ
夕暮れ時の三田線トンネル真上の風景です。周囲の建物は、三田線のトンネルに悪影響を与えないように、いろいろな工夫をしています。
地面の下の三田線トンネルが透けて見えるような気がしました。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。