1.はじめに
地図を見ると、都営地下鉄浅草線の浅草駅は東京メトロ銀座線浅草駅の南にあります。しかし駒形橋西詰の交差点で両線がぶつかってしまいそうな気もしますし、浅草線がどのような経路で隅田川対岸に渡っているのかも気になります。
浅草線の浅草駅はどこにあるのでしょうか?
2.浅草線の浅草駅は大半が建物の下
銀座線の浅草駅は吾妻橋西側の道路の下にあり、それに続くトンネルは駒形橋西詰交差点まで南下してから西に曲がります。したがって、銀座線浅草駅のすぐ南に浅草線の浅草駅を建設する余地はありません。調べてみると、浅草線建設に先立ち経路がいろいろ検討されていました。
(a)蔵前駅から雷門仲通を北上して浅草一丁目交差点から雷門通に入り、雷門前に駅を設ける案
(b)駒形橋と吾妻橋の間の護岸脇に駅を設け、吾妻橋北方で隅田川対岸に渡る案
(c)現状とほぼ同一経路だが、駅を駒形橋西詰交差点の南方に設ける案
(d)現状経路
民有地通過距離がいちばん短いのは(c)案ですが、これだと銀座線の浅草駅とかなり遠くなってしまいます。(a)案は建設延長が長くなってしまうし、(b)案は北十間川の中を延々と進むので建設が大変…ということで現状の(d)案になったのでしょう。
現状経路(写真3)は「駒形橋西詰交差点から半径220m右曲線で民有地に入り込み、護岸付近から半径170m右曲線で隅田川を渡り、吾妻橋橋台の脇を通り抜ける」となっています。これはこれで建設は結構たいへんだったと思います。
写真1は、浅草橋駅-押上駅間開業(1960年12月)の3か月後の状況です。隅田川を渡る区間に関して、(1)~(5)に記した築島式ケーソン工法で9基のケーソンを河底に沈めてトンネルとしています。
(1)トンネル建設予定地を囲むように矢板を河底に打込む
(2)矢板で囲まれた範囲に砂を入れる(島ができる)
(3)島でケーソン(鉄筋コンクリート製の中空箱)を構築する
(4)ケーソン底部を掘削し、沈下させる
(5)所定深さになったら底部空間をコンクリートで埋める
写真1をよく見ると浅草駅上部には建物がほとんど無く、隅田川には築島の跡が認められます。
写真2は最近の状況です。建物が建ち並び、どこが浅草駅なのかよくわからなくなっています。
写真3は、浅草駅およびその前後のトンネル位置を追記したものです。銀座線との関係もよくわかります。
3.浅草駅
写真4は、浅草駅のプラットホーム南端から押上駅方面を撮影したものです。撮影地点は駒形橋西詰交差点の少し南側になります。銀座線との乗換連絡通路があり乗降客が集中しがちな北側を直線にしたのは、事故防止の意味で正解と言えましょう。
写真5は、浅草線浅草駅のプラットホーム北端から押上駅方面を撮影したものです。私が立っている場所は隅田川護岸の真下あたりで、ここから半径170m右曲線で隅田川の下を渡っていきます。上記の通り、この先は築島式ケーソン工法で建設されています。
4.地上の風景
写真6は浅草駅の地上全景です。建物①は駒形橋西詰交差点に建っています。交差点を過ぎると民有地に入り込みます。建物②~④は浅草駅の上です。建物④にはA3出口に向かう階段があります。建物⑤(雷門郵便局)と建物⑧は浅草駅の上ではありませんが、建物⑥~⑦およびその間の建物はすべて浅草駅の上です。
写真7は、駒形橋西詰交差点を北から見た状態です。浅草線は写真奥から左手前に向かって走ってきます。交差点の南方から半径220m右曲線が始まっていて歩道の下に食い込んでいますが、建物①はかろうじて干渉していません。建物①の手前にはA2a出口が見えます。
写真8は、駒形橋西詰交差点を南から見た状態です。写真4の真上の風景になります。浅草線は写真手前から右奥に半径220m右曲線で進んでいます。建物②は浅草駅の真上です。
建物②右下には赤い駒形堂が見えますが、これも浅草駅の上です。
ウェブ検索すると駒形堂の案内はたくさん出てきますが、その敷地内にある写真9のようなものに関する説明は…まずありません。これは浅草駅の換気塔です。裏手には「通風口No.換気塔 東京都交通局」という妙な表示板が取付けられています。No.とくればその後には「数字」だと思うのですが…なぜか「換気塔」です。
駒形堂脇の換気塔には写真10のような図も取付けられています。「連結送水管設備・連結散水設備配置図」と称し、どの送水口に接続するとどの範囲に散水されるか記されています。防災上重要ですが、当方としては駅構内の現状構造を知ることができるたいへんありがたいものです。
写真11は、A3出口付近の状況です。建物②および建物③はそのほとんどが浅草駅の上です。建物④は一部のみが浅草駅の上で、A3出口への階段を内蔵しています。建物⑤は雷門郵便局で、浅草駅の上ではありません。
写真12は写真11の裏側になります。写真右に見えるのは建物⑤(雷門郵便局)です。建物⑤自体は浅草駅の上ではありませんが、写真の道路の真下には浅草線と銀座線の乗換連絡通路があります。路上は寂しい感じですが、地下の乗換連絡通路は多くの人々が行き交っています。
浅草線は写真奥から左手前に向かって走っています。
写真13は写真12と同一の裏通りです。この真下に浅草駅があります。浅草線は私の足元から奥に向かって走っています。
写真14も裏通りですが、このあたりが浅草駅プラットホームの北端になります。つまり、写真5の真上ということになります。
手前に見える建物⑦は浅草駅の上ですが、建物⑧は浅草駅の上ではありません。よく見ると建物⑧の壁面は階段状になっており、道路と護岸に対して斜めに配置された浅草駅を逃げていることがわかります。
写真6を再掲載します。建物⑥~⑦およびその間の建物は浅草駅の上です。建物⑧は浅草駅の真上ではありません。そのため階床が若干高くなっています。
建物⑦の前の護岸(写真6中の黄↑印)には「河川占用許可」と「都営地下鉄構築物河底横過標識」が取付けられています。この下を浅草線が走っているという証です。
5.まとめ
浅草線の経路は「駒形橋西詰交差点から半径220m右曲線で民有地に入り込み、護岸付近から半径170m右曲線で隅田川を渡り、吾妻橋橋台の脇を通り抜ける」となっています。駒形橋西詰交差点の少し南から隅田川護岸までが浅草駅になっています。浅草駅の上には数多くの建物があります。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。