【地下好きの方へ】西馬込駅付近の謎

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1.はじめに

 浅草線の営業列車は西馬込駅から出ますが、浅草線の起点は西馬込駅ではありません。また、この駅から細いトンネルがどこかに続いています。これらはいったいどういうことなのでしょうか?

2.浅草線の起点と入出庫線

 浅草線第二京浜の地下を走っていますが、西馬込駅は起点に位置するのではなく、「起点から0km415m000」に位置します。そして、本線の線路は西馬込駅からではなく、「起点から」敷設されました。

 それではなぜ起点が西馬込駅から400m以上離れているかですが、多摩川を越えて川崎まで伸ばす考えがあったから、ということのようです。ちなみに路線建設の免許取得時は馬込駅が起点となっていました。しかし、馬込車庫を本門寺の北に建設することになったため、入出庫線のような感覚でひと駅伸ばして西馬込駅を設置することになったという経緯もあります。

 次に「西馬込駅から続いている細いトンネル」ですが、これは馬込車両基地(馬込車両検修場)に至る入出庫線(単線トンネル)です。入出庫線ですから、そこを走る車両に乗客が乗ることはできません。

 入出庫線は西馬込駅の南西で本線から分岐し、第二京浜の下から徐々に民有地に食い込んだのち、坑口から地上に顔を出します。

3.入出庫線の経路

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写真1 空中写真(1966年)

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写真2 空中写真(1971年)

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写真3 空中写真(2017年)

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写真4 空中写真(地下鉄追記)

 浅草線泉岳寺駅-西馬込駅間が開業したのは1968年11月です。したがって、写真1は工事中の空中写真ということになります。写真中央付近には整地が終わった馬込車庫建設予定地が広がっています。車庫敷地を南北方向に横切る跨線橋はすでに完成しており、坑口も見えます。車庫敷地の北には、トンネルを掘削した跡も見えます。

 写真2は開業後です。当然ですが馬込車庫は完成しており、留置されている車両も見えます。西馬込駅北方には馬込車両工場がありましたが、2000年に馬込車庫の敷地内に統合されました。

 写真3は最近の状況です。馬込車両基地(馬込車両検修場)が広がっています。西馬込駅からの入出庫線単線トンネルは、建物①②の前を通り、建物③の真下を突き抜けて坑口に至ります(写真4参照)。

 当初私は、入出庫線は本線から分岐後「直線的に」坑口に至ると考えていました。しかしこの経路だと入出庫線は建物②の西側と部分的に干渉することになり、建物③も斜めに突き抜けることになります。どうも不自然なのですが、今ひとつはっきりせずしばらく悩んでいました。

 ある日ふとYouTube東京都交通局公式チャンネルがあることを思い出し、浅草線の前面展望動画がないか探したところ…ありました。下記です。

【地下鉄】都営浅草線 前面展望(浅草橋~馬込車両検修場・報道関係者向け試乗会)4倍速Ver. (https://www.youtube.com/watch?v=6ANbDZY-3mI)

 入出庫線経路に関して決定的だったのは8:59~9:03あたりに出てくるわずかな左曲線でした。入出庫線は途中で屈曲しており、そのため建物②はトンネルに干渉していないのです。また、建物③はその方向が入出庫線と一致している(トンネル真上に建っている)ことがわかりました。

 この動画には第二京浜の地下に続く本線(複線線路)もはっきり写っています。通常乗ることができない区間であるだけに、このような動画を手軽にみられるのはありがたく思います。本当に便利な世の中になったものです。

4.現地の状況

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写真5 西馬込駅南口

 写真5は西馬込駅の南口です。開業間もない頃(写真2)は空地の中でこの建物が威容を誇っていたように思われますが、今となっては半世紀以上前の小さな古い建物に過ぎない感じです。

 ところで、「西」馬込駅の「南」口と「東」口は「南」馬込五丁目に存在します。まあ、どうでもよい話かもしれませんけど。

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写真6 入出庫線の真上

 馬込車両基地に向かう入出庫線は、第二京浜地下の本線トンネルから分岐します。その後、建物②の前をかすめて建物③の真下に向かいます。こうして見ると、建物③の方角は入出庫線トンネルに合わせてあることがわかります。建物②と③の間は公園になっています。

 

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写真7 入出庫線の真上

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写真8 入出庫線の真上

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写真9 坑口

 写真7は、写真6と逆に建物③の前から建物②を見たところです。建物③が第二京浜に対して斜めに建てられていることがわかります。

 写真8は建物③(1997年竣工)です。基礎構造に関して何か文献がないだろうかと探してみましたが、見つかりませんでした。現代の建築技術を以ってすればトンネル真上にこの程度の建物を建てることはそうむずかしい話ではなく、わざわざ文献に記録を残すほどではないのでしょう。

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写真10 坑口(1992年)

 建物③の真下を通り抜けた単線トンネルは、馬込車両基地の脇で地上に顔を出します。写真9を見るとこれらの位置関係がよくわかります。

 写真10は1992年の坑口です。当時と現在を比較すると周囲の状況は変化していますが、坑口と馬込車両基地の雰囲気は今と変わりません。

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写真11 昼寝しているE5000形

 馬込車両基地(馬込車両検修場)の中央付近には跨線橋があり、基地内を見渡すことができます。昔は5000形ばかりでしたが、のちに5300形ばかりになり、現在では5500形への置き換えが進んでいます。この基地内の車両工場には大江戸線の車両も入ってくるため、牽引用の電気機関車E5000形が昼寝しています。

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写真12 馬込車両基地の引上げ線

 本門寺の南西側には呑川(のみかわ)が流れており、馬込車両基地の西端はその谷に向かって低くなっていきます。そのため、平坦な引上げ線は写真12のように高架になっています。

 あたかもこの引上げ線が川崎方面への延長予定線であるかのように見えますが、冒頭に記したように第二京浜の地下にある方が本線です。

5.まとめ

 西馬込駅は起点に位置するのではなく、「起点から0km415m000」に位置します。本線の線路は西馬込駅からではなく、「起点から」敷設されています。

 西馬込駅の南西(起点寄り)には、本線から分岐して馬込車両基地に至る入出庫線(単線トンネル)があります。入出庫線は第二京浜の地下から民有地に食い込み、建物の下を通って地上に顔を出します。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。