【お寺が好きな方へ】浄閑寺の地下を往来する人々

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1.はじめに

 三ノ輪の近くに、投込寺として有名な浄閑寺があります。実は、このお寺の境内の「地下」を日々数多くの人々が往来しています…。

 今回は、浄閑寺の地下のお話です。

2.浄閑寺の地下にはトンネルがある

 浄閑寺の創建は1655年(明暦元年)です。1855年(安政2年)の大地震の際に新吉原の遊女が数多く亡くなり、この浄閑寺に投げ込まれるかのように葬られたことから投込寺と言われるようになりました。

 時代は下って1959年、東京メトロ日比谷線の建設が始まりました。日比谷線浄閑寺の境内の地下を斜めに突っ切ることになりました。浄閑寺境内の西側と北側には墓地が広がっていますが、日比谷線が突っ切ることになった南東側はもともと墓地がなかったところ(現在は駐車場)です。日比谷線建設史には「墓地は避けられる」という表記があります。やはり、墓地を掘り返すことはあまり良い気分ではなかったのでしょう。

 そうです。浄閑寺の地下には日比谷線のトンネルがあり、そこを毎日数多くの人々が電車に乗って往来しているのです。

3.現地の状況

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写真1 空中写真(1957年)

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写真2 空中写真(1963年)

 写真1は、日比谷線の工事が始まる前の浄閑寺周辺の状況です。

 写真2は、日比谷線開業後の状況です。このあたりの区間は1961年3月に開業しています。写真中央上部に坑口が見えますが、北千住駅からここまでは地上を走っています。ここから地下にもぐり、浄閑寺の境内を突っ切って昭和通の下にもぐり込んでいます。明治通と交差するあたりには三ノ輪駅があります。

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写真3 空中写真(2017年)

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写真4 空中写真(地下鉄追記)

 写真3は最近の状況です。浄閑寺の境内には本堂(黒い屋根)と別棟(緑青色の屋根)が見えます。別棟は右下が階段状になっていますが、これは日比谷線トンネルとの干渉を避けたためと考えられます。

 写真4は、日比谷線地下区間の経路を追記したものです。

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写真5 33‰勾配

 日比谷線起点である北千住駅の次は、高架の南千住駅です。南千住駅を出てJRの線路をまたぎ終わると、33‰下り勾配になります。写真5は南千住駅(写真右方)から高度を下げてきたところで、下をくぐる道路は制限高2.5mです。こうして見るとかなりの勾配ですね。

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写真6 坑口付近

 33‰勾配を下ってきた日比谷線は半径163mで左に曲がりながら坑口に入ります。急曲線なので徐行していますが、電車に乗っているとぐんぐん沈み込んで行くという感じです。逆に地下から顔を出す電車は半径163m曲線で33‰勾配を登るわけで、かなり厳しい走行条件になります。

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写真7 浄閑寺(投込寺)

 写真7は浄閑寺の山門と本堂で、写真左側(西側)に墓地があります。右にちらりと写っているのが別棟で、日比谷線は写真右から左手前に向かって走っています。建設史および現地状況より山門はギリギリのところで日比谷線トンネルの上ではないと判断されますが、地図によっては必ずしもそうなっていなかったりします。

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写真8 日比谷線の上の区境公衆便所

 写真8は、浄閑寺の向かい(南側)です。自転車の走っている道路が区境で、写真左側(東側)のクリーム色の建物は荒川区、右側(西側)の公衆便所は台東区になります。左側のクリーム色の建物、公衆便所とその奥の駐車場、右奥のクリーム色の建物と桃色の建物、これらの下を左手前から右奥に向かって日比谷線が突っ切っています。

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写真9 日比谷線の上の区境公衆便所

 写真9は、写真8の公衆便所を反対から(南から)見た状態です。写真9右側の歩行者は荒川区から台東区に越境しているところです。写真右奥に見える塀は浄閑寺で、日比谷線浄閑寺境内(写真右奥)から左に向かって走っています。この公衆便所は区境に面していると同時に日比谷線トンネルの上にあるわけで、趣味的に愉しい存在です。

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写真10 三ノ輪駅

 写真10は、夕暮れ時の三ノ輪駅3番出口です。目の前の広い道は明治通です。日比谷線は、写真右奥から三ノ輪駅3番出口の下を通って左手前に向かって交差点を横切り、昭和通の下にもぐり込んでいます。

 

4.まとめ

 三ノ輪近くの浄閑寺(投込寺)境内の地下を日比谷線が突き抜けています。毎日数多くの人々が電車に乗って、浄閑寺の地下を往来しています。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。