【鉄道技術好きの方へ】電車用パンタグラフ操作回路

1.はじめに

 今回は、国鉄新性能電車のパンタグラフはどのようにして一斉に上げ下げするか…ということに関する記事です。

2.専用の制御線が編成全体に引き通されている

 国鉄新性能電車の場合、直流100V電源である220線が編成全体に引き通されています。先頭車にはパンタ上げ下げの押ボタンスイッチがあり、上げボタンを押すと213線が加圧されます。これによりパンタグラフ搭載車両のパンタ上げ電磁弁が励磁されて圧縮空気がパンタグラフのカギ装置小シリンダに送り込まれるため、編成中のパンタグラフは一斉に上昇します。

 先頭車の下げボタンを押すと、212線が加圧されます。これによりパンタグラフ搭載車両のパンタ下げ電磁弁が励磁され、圧縮空気がパンタグラフの下げシリンダに送り込まれ、編成中のパンタグラフは一斉に降下します。

3.パンタグラフ操作回路の実例

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図1 153系パンタグラフ操作回路

 153系の場合(図1)、モハ152に搭載されている電動発電機が直流100Vを220線に供給しています。編成中にモハ152が複数入っている場合は並列供給となります。クハ153には蓄電池が搭載され、モハ152の電動発電機が停止している場合でも220線に直流100Vを供給しています。

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写真2 クハ455-2の運転台

 クハ153にはパンタ上げ下げの押ボタンスイッチがあります。写真2は153系と同様の急行用455系の運転台です。赤いボタンがパンタ下げスイッチ、白いボタンがパンタ上げスイッチです。

 クハ153でパンタ上げボタンを押すと、213線が加圧(220線と接続されて直流100V印加)されます。パンタグラフ搭載車両であるモハ152において213線にはパンタ上げ電磁弁が接続されており、直流100Vで励磁されることにより元空気溜の圧縮空気が電磁弁を介してパンタグラフのカギ装置小シリンダに送り込まれます。こうしてモハ152全車のパンタグラフは一斉に上昇します。

 クハ153でパンタ下げボタンを押すと212線が加圧されます。これによりモハ152のパンタ下げ電磁弁が励磁され、パンタグラフ下げシリンダに圧縮空気が送り込まれますので、モハ152全車のパンタグラフは一斉に降下します。

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図3 153系栓受制御側(内側)配列

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図4 153系栓受補助側(外側)配列

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表5 153系栓受制御側(内側)一覧表

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表6 153系栓受補助側(外側)一覧表

 以上の220線、213線、212線はジャンパ連結器により車両と車両の間を渡っています。153系のジャンパ連結器内部配列(図3および図4)と、線番一覧表(表5および表6)を示します。

4.まとめ

 専用の制御線が編成中に引き通されており、213線を加圧するとパンタグラフは一斉に上昇、212線を加圧するとパンタグラフは一斉に降下します。

 クハ153での操作が、制御線によりモハ152に伝達されます。制御線を車両と車両の間に渡すため、ジャンパ連結器があります。

 モハ152が編成中に2両、3両と入っていても、パンタグラフは一斉に上昇降下します。

 モハ152は電動発電機を搭載して220線に直流100Vを供給していますが、自車の213線や212線に直接接続されているわけではなく、クハ153で制御するようになっています。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…