駅の案内地図は常に正しいか?

1.はじめに

 「東京メトロ丸ノ内線のトンネルはどこにあるか」を連載しています。
 今回は、駅にある案内地図は必ずしも正しいとは限らない…という事例です。

2.駅案内地図の路線経路

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写真1 駅案内地図記載の路線経路

 中野富士見町駅に案内地図があります。周辺の道路や建物が描かれ、その中に中野富士見町駅丸ノ内線分岐線の経路が記されています。その駅案内地図に記された路線経路を、1963年の空中写真に転記しました(写真1)。
 しかし、この経路を見ると「本当か?」という感じがします。東(写真右)方から来た丸ノ内線分岐線は、道路があるにもかかわらず道路北側の民有地を走っています。西(写真左)に移動するにしたがって、民有地への食い込み方は大きくなり、その後急激に南に折れ曲がるようにして中野富士見町駅に至っています。

3.現実の経路

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写真2 建設史記載の路線経路

 丸ノ内線分岐線(建設当時は荻窪線)の建設史で、中野富士見町駅付近の経路を調べてみました。丸ノ内線分岐線は東(写真右)の方から道路の真下を走り、中野富士見町駅プラットホーム(半径350m左曲線)に至っています。この経路を2009年の空中写真に転記しました(写真2)。これなら不自然さはありません。

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写真3 中野富士見町駅地上駅本屋

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写真4 中野富士見町駅前風景

 次に、丸ノ内線分岐線の電車に乗って確認しました。東(中野新橋駅方面)から走ってきた電車は、中野富士見町駅に入ると同時に左に曲がり始めます。プラットホーム全体が曲がっています。プラットホームの中央より少し西(方南町駅寄り)に階段があり、そこを上ると地上駅本屋(いわゆる駅舎)に出ます。中野富士見町駅地上駅本屋は道路のすぐ脇です(写真3)。これらの状況はいずれも建設史の記載と矛盾しません。駅出口から東(写真右奥)を見ても(写真4)、民有地を走っているような雰囲気、例えば建物の壁面が道路よりも後退している等の状況はありませんでした。

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写真5 駅東端のNo.312換気口

 建設史の中野富士見町駅平面図を見ると、プラットホーム東端に換気口が記載されています。現地の換気口位置(写真5:以前ご紹介したNo.312換気口)と照合すると、丸ノ内線分岐線は道路の真下を走っていることになります。
 ちなみに写真5の奥に見えるのが中野富士見町駅です。丸ノ内線分岐線は、換気口の右側に見える道路の下を手前(東)から奥(西)に向かって走っています。

丸ノ内線分岐線換気口さまざま】https://me38a.hatenablog.com/entry/2019/11/02/232323

4.まとめ

 駅の案内地図と言えども路線経路の記載が正しいとは限りません。建設史などの一次資料を調べる必要があります。さらに現地調査により正しいかどうか確認することも大切だなと改めて感じました。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】
写真1~2は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(MKT636-C7-12、CKT20092-C65-7)を私が編集・加工したものです。