ある日、街を歩いていたら垂直尾翼(写真1および2)が見えました。以前、某建物内で「本物の機体の一部」を発見してしまったので、ひょっとすると今回もそうかもしれないと思い、よくよく観察しました。
【ビルの中の機体】https://me38a.hatenablog.com/entry/2019/03/03/165039
しかし、なんだか不自然な印象です。
まず、全体的に筋掘りだらけです。実物は方向舵の部分が垂直安定板に対して動きますから、両者間には隙間があります。しかしこの「垂直尾翼」の場合は隙間ではなく単なる筋掘りです。隙間をパテで埋めたのかとも思いましたが、そういう感じでもありません。
また、実物の垂直安定板は骨組みに外板を貼り付けてあるため継目はありますが、筋掘りはありません。さらにこの「垂直尾翼」の表面にはリベットの跡がありません。
次に表面を軽く叩いてみました。実物はアルミ合金もしくは繊維強化樹脂でできていますので乾いたようなこもった感じの音が出るはずですが、この「垂直尾翼」の場合は割と重い感じのゴンゴンという響きを感じました。
現物の観察はひとまずこの程度にして帰ってきました。
実物か模造品かという以前に、この垂直尾翼は何という機種のものなのか調べてみました。
まず構造的に特徴的なのが、方向舵が上下に2分割されていることと、方向舵分割部の形状が「く」の字形であるという点です(写真3)。この特徴をいずれも有する機種を手元の資料で探してみると…ボーイング747が該当しました。世の中にいろいろな機種が存在しますが、それ以外の機種ではどちらかの条件を満たしません。(もう少し細かく申すと、747の-100から-400までのもので、SPは該当しません。)
次に「垂直尾翼」上半分に関して、747垂直尾翼の図および写真と見比べてみました。実物は垂直安定板上部のaに対するbの比率(写真4)が1.2倍程度なのですが、この「垂直尾翼」はb/a=2ぐらいあり不自然です。
改めて前後方向の寸法比率(垂直安定板と方向舵の比率)を眺めてみると(写真3)、垂直安定板の寸法が小さめでやはり不自然です。
最後に高さに関してです。747の全高(路面から垂直尾翼上端まで)は19.4mであり、垂直尾翼だけの高さは約10mです。しかし、この「垂直尾翼」はせいぜい5m程度しかありません。大きさとしてはボーイング737のものとほぼ同じということになりますが、737の垂直尾翼構造は747と大きく異なります。