日比谷公園に散在する丸ノ内線換気口

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写真1 日比谷駅A14出口通路

 丸ノ内線日比谷駅はありません。しかし、日比谷駅から日比谷公園に通じる通路(写真1)のすぐ向こう側は丸ノ内線のトンネルです。丸ノ内線の電車が通るとゴトゴト…という音が響いてきます。銀座駅から霞ヶ関駅まで1.0kmありますので、中間に位置するこのあたりに丸ノ内線日比谷駅があっても不思議はないような気がします。(余談ですが、日比谷線銀座駅霞ヶ関駅の間に日比谷駅があります。こちらは銀座駅から霞ヶ関駅まで1.6kmですが。)

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写真2 日比谷駅A14出口

 日比谷公園の日比谷門脇には日比谷駅のA14出口(写真2)があります。この真下を丸ノ内線が右手前から左奥に向かって通過していますが、丸ノ内線が走っているということを意識してしまうと「この階段を下りれば丸ノ内線に乗れる」と勘違いしてしまいます。

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写真3 No.80換気口

 参考資料1のP.120先「図77 西銀座・新宿間線路平面図及び縦断面図」によると、日比谷門(写真2)から日比谷公園に入った丸ノ内線は半径300m左曲線に続いて半径500m右曲線でS字状にうねり、公園西側の霞門から出ていきます。公園内のどこを通っているかは、同資料P.146「図98 日比谷公園内工法区分図」に記されており、大噴水をかすめ、雲形池の下を通っていることがわかります。
 この図98には換気口の形状と位置まで記されています。日比谷門のすぐ近くにあるのがNo.80換気口(写真3)です。同写真において丸ノ内線は奥の園路の下を左から右に走っているのですが、この換気口は妙なことに園路に対して斜めになっています。その理由は図98をよく見ればわかります。建設当時はNo.80換気口(写真3)のすぐ脇に園路があったのです。その後の公園内再整備で、園路の位置が変わっているのでした。

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写真4 はにわ

 日比谷公園のほぼ中央、松本楼の南東付近にはにわ(写真4)があります。そして、その奥には隠れるようにNo.81換気口(写真5赤↓印)があります。

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写真5 No.81換気口

 参考資料1のP.146「図98 日比谷公園内工法区分図」によると、丸ノ内線トンネルはNo.81換気口(写真5)の北側(写真左側)にぴったり接するように構築されています。A線の電車は写真5の左奥から左手前に向かって走っていることになります。こうして写真を撮っている間にも電車が通過し、押し出された空気と共に独特のにおいが換気口から出てきます。

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写真6 No.82換気口と雲形池

 丸ノ内線の換気口越しに雲形池を見る人もいないだろうな…と思いながら撮ったのが写真6です。参考資料1のP.146「図98 日比谷公園内工法区分図」によると、この換気口南側(写真6右側)に接するような形で丸ノ内線トンネルがあります。

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写真7 No.82換気口越しの霞門

 No.82換気口(写真7)は他の換気口と異なり、開口寸法が大きくなっています。よく見ると南側1/4(写真7左側)の形状は、No.80換気口、No.81換気口と同様ですが、北側3/4(写真7右側)は換気口の形状が異なります。丸ノ内線トンネルはこの換気口の南側(写真7左側)に密着して構築されていますから、南側1/4はトンネル用の換気口だと考えられます。電車の走行音が南側1/4から聞こえてくることからまず間違いないでしょう。
 では北側3/4(写真7右側)は何の換気口でしょうか? 霞ヶ関駅B2出口(霞門の脇)へ向かう通路の階段下に「霞ヶ関変電所」という表示があったのを思い出して参考資料1を確認してみたら、P.280に日比谷公園地霞門内地下に霞ヶ関変電所がある旨記されていました。詳細はよくわかりませんが、No.82換気口の北側3/4は霞ヶ関変電所につながっているのではないでしょうか。

 いずれの換気口も目立たないように工夫されているので、大半の方々の目に留まることはないと思いますが、それをわざわざ見つけて丸ノ内線トンネルの位置を特定している人もいる…というお話でした。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)