銀行の真下を突き抜ける地下鉄

銀行の真下を地下鉄が突き抜ける…というと、地下鉄のトンネルから銀行の金庫まで秘密の通路が掘削されて…などと想像してしまいそうですが、そういうわけではありません。とは申せ、大きな建物の真下を地下鉄が突き抜けているというのは不思議な感じです。場所は有楽町線麹町駅の南です。


1.文献確認

建設史P.432先の平面図及び縦断面図によると、有楽町線麹町駅からまっすぐ三菱銀行麹町支店(当時の名称)の真下に突っ込んでいることがわかります。さらにその南方でいくつかの建物の下を突き抜け、半径300m右曲線でプリンス通りの下にもぐり込みます。半径300m右曲線が終わると同時に複線シールドになり、プリンス通りを南下します。

建設史P.645~648には、三菱銀行麹町支店ビルの下受工事(アンダーピニング)に関する記述があります。当時の建物は鉄骨コンクリート9階建で総重量10,600トン。3年間かけて下受工事、トンネル工事、復旧工事を実施しています。なお、当時の建物の平面図は逆L字形ですが、現在の建物(麹町ダイヤモンドビル:2004年竣工)は敷地いっぱいです。有楽町線トンネルを跨ぐ地中梁を追加したものと思われます。

ちなみに麹町ダイヤモンドビルの南にも有楽町線が真下を突き抜けている建物がいくつかありますが、これらに関して公開されている文献は見つけられませんでした。


2.現地の状況

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写真1 麹町ダイヤモンドビル(北側)

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写真2 麹町ダイヤモンドビル(南側)

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写真3 豊栄稲荷大明神

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写真4 大明神の縁起

麹町駅の真上から南方を見ると、麹町ダイヤモンドビル(写真1参照)が建っています。有楽町線はこのまままっすぐ突っ込んでいきます。麹町ダイヤモンドビルの裏(南側)には豊栄稲荷大明神(写真2および3参照)があり、大明神の縁起(写真4参照)にはこの土地の歴史が記されています。縁起およびその他の資料からこのあたりの歴史を簡単にまとめると、下記のようになります。

 (1)明治22年(1889年) 垣見家からお社ごと土地を入手して銀行設立
 (2)昭和44年(1969年) 三菱銀行店舗新築に伴い新社殿落成
 (3)昭和45年(1970年) 有楽町線工事着工
 (4)昭和49年(1974年) 有楽町線池袋駅-銀座一丁目駅間開業
 (5)平成 6年(1994年) 三菱銀行社屋建替えのため仮店舗に移転
 (6)平成16年(2004年) 麹町ダイヤモンドビル新築

現在、麹町ダイヤモンドビルには三菱東京UFJ銀行などがテナント入居しています。

 

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写真5 麹町富士ビル

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写真6 有楽町線上の風景

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写真7 有楽町線上の風景

写真5は、写真2と同じ交差点で角度を変えて撮影したものです。この麹町富士ビル(1990年竣工)も有楽町線の真上に建っています。有楽町線はさらにいくつかの建物(写真6参照)の真下を通り抜け、半径300m右曲線でプリンス通りの下にもぐり込みます(写真7参照)。そうと知らないと、地下鉄がこの下を走っているようには見えません。


参考資料
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道有楽町線建設史」帝都高速度交通営団(平成8年)