前回は平河町交差点で話が止まってしまいましたので、先に進めます。
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半蔵門線は半径250mで左に曲がりながら、平河町交差点付近で青山通りの下を斜めに突っ切ります。その先にあるのは平河町森タワービルです。
平河町森タワーの青山通り側公開空地ですが、半蔵門線は写真の手前から奥に向かって走っています。このビルの基礎がどうなっているか気になって、日本建築連合会のHPで「平河町森タワー」と検索みたら、まさにその名のPDFファイルが見つかりました。その資料には下記のようなことが記載されています。
(1)地下鉄軌道上を活用した職住近接型の建物。竣工は2009年。
(2)建物の南西から北東に向かって2本のシールドトンネルが走っている。
(3)建物の荷重はシールド両側の杭に載ったメガ梁(シールドを跨ぐ梁)で支えている。
(4)建物のすぐわきには首都高速の地下トンネルと高架が2段積みになっている。
メガ梁は建物1階床分とほぼ同じ厚さで、手前の公開空地の下まで伸びています。これをつくるだけでも大変な手間がかかったのではないかと思います。地下鉄の真上に地上24階のビルを建ててしまうとはすごいものです。
こちらは平河町森タワーの半蔵門通り側です。左手前から奥に向かって2本の単線シールドトンネルが存在します。
建設史P.404には、長さ66mの隼町中間立坑が設けられたと記されています。さらにP.470図70にはこの付近の平面図、図71には縦断面図が掲載されており、写真4に写っている範囲の真下には隼町中間立坑があることがわかります。この立坑を境に、永田町駅側(奥側)は単線シールドトンネル2本、半蔵門駅側(右手前側)は複線シールドトンネル1本となっています。ちなみにこの付近は35‰登り勾配で、電車は半蔵門駅に向かって一生懸命力行しているはずです。
建設史P.470図70をよく見ると、日本青年会議所の建物は隼町中間立坑に掛かっておらず、手前の白い建物と青っぽい建物だけが立坑の上に建てられていることがわかります。白い建物と青っぽい建物の背が低いのは、こういう理由があるからなんですね。
まさにこの真下を半蔵門線は走っています。撮影している私は、隼町中間立坑のほぼ中心線上に立っています。青っぽい建物は平河町TSビルと称しますが、なんと、赤→印部に営団の境界標がありました。
写真6の赤→部を拡大したものです。これが設置されているということは、TSビルが建っている土地は営団(現在の東京地下鉄)所有ということになりそうです。ひょっとすると、ビル名称のTSはTokyo Subwayの略なのかもしれません。ちなみにこのビルに関してネットで調べてみたら、竣工は1982年12月となっていました。永田町駅~半蔵門駅が開業したのは昭和57年(1982年)12月9日ですから、なるほどという感じです。
別の日に、半蔵門通りを撮影したものです。半蔵門線は、奥に見える平河町森タワービルの真下から青っぽいビルの下を通り、このあたりから半蔵門通りを手前(北)に向かっています。ちょうど隼町中間立坑全体を見るアングルになります。道路を渡っている方々はおそらくだれも立坑のことなどご存じないでしょうけれど…。
参考資料
1.「東京地下鉄道半蔵門線建設史(渋谷~水天宮前)」帝都高速度交通営団(平成11年)
2.「平河町森タワー」日本建築業連合会HP(2010年)