鉄道車両における「改造」って何なのだろうか…と思った話

 鉄道車両(いわゆる電車など)はごくおおざっぱに、台枠(人体に例えれば骨のようなもの)の上に車体(肉のようなもの)を構築し、台枠の下には各種の制御装置など(臓器のようなもの)をぶら下げている…と言えます。鉄道車両は一般的に20~40年前後使用されることが多いものですが、新製された状態のまま一生を終えるということはまずありません。例えば客室内の座席を交換するのは当たり前の話ですし、法規や取扱いの変更に伴い乗務員室機器を追加あるいは改造するのも当然の話です。電子部品を多用している近年の制御装置は車体そのものより先に寿命が来ますので20年もすれば丸ごと交換するのが常識です。さらに陳腐化した車体を更新する(造り替える)のも珍しくありません。

 極端な例だと、(1)新製後20年ぐらい経過してから車体を更新(台枠含む構体を丸ごと新製)して機器のみ再利用、(2)新製後40年ほど経過してから今度は各種機器を新品と交換…ということもあります。こうなると、新製時から引き継がれている部位はなくなってしまいます。しかし、それでも車両の戸籍上は「改造」ということになっています。

 上記(1)において車体(台枠含む構体丸ごと)を新製して機器を再利用すると、古い車体が残ります。あくまでも「車体更新改造」という扱いですから、古い車体にはもう車籍(その車両としての戸籍)はありません。ただし古い車体という「物体」は存在しています。そうすると「古い車体を使って新たな車両を造っちゃえ」という考えが出てくるのはごく自然です。写真1はその一例です。大手私鉄(小田急)において不要になった車体であっても地方中小私鉄(上田丸子電鉄→上田交通)においては「お得な材料」だったようで、各種機器を艤装して新たな電車に仕立て上げました。

 一方、小田急の方は新しい車体に既存の機器を取付け直して「車体更新改造」と称しています。この車両、小田急で廃車になったのち関東鉄道で機器を改造されて再活躍しました。これが写真2です。

写真1 小田急クハ1650形旧車体利用

写真2 小田急クハ1650形新車体利用

 さて、車籍上は写真2の車両が「ご本人」ということになりますが、「生まれた時の状態を引継ぐ物体」として見た場合はむしろ写真1の方が「ご本人」の部分が多いことになります。年月の経過とともに次々に改造されていくのは当然のことではありますが、その改造の程度によっては「ご本人はいったいどの部分ですか?」という状態になります。地方私鉄の車両を調べているとこの手の話が多く、興味深く思います。

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 冒頭で鉄道車両を人体に例えましたが、(1)(2)のような話を人体で実施するととんでもないことになりますね。

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さかてつでした…