常識が共有不足だと命にかかわることもある

 「常識」という言葉には、「当該分野における基礎」という意味もあると思います。技術分野において常識が不足している場合には、時として非常に危険な状況に陥ることもあるので十分注意が必要です。

◇   ◇   ◇
 

 ある方が他業種(技術とは縁がない分野)から転職してきました。ものづくりの職場においては労働災害を発生させないため安全教育を実施することになっています。もちろんこの中には「電圧が印加されている可能性がある部位(端子等)には決して触れない」という内容も含まれていました。

 ある日のことです。その方に装置の絶縁抵抗を確認してもらうことになりました。回路図と記録用紙を提示しながら「ここに記してあるように、この端子とこの端子の間の抵抗値をテスタで測定して○○MΩ以上ならOK…」とまず私が実演してみせました。その後テスタをその方に渡したら…なんと、テスタ棒を写真1のように持って測定しようとしたのです。私はびっくりして写真2のように持たないとダメである旨、説明しました。(写真は手持ちの部品等でその時の状況を再現したものです。)

写真1 誤った(危険な)持ち方

写真2 正しい持ち方

 写真1の何がまずいか…ですが、テスタ棒の金属部に指を添えています。これでは装置の絶縁抵抗ではなく、自分の体の抵抗を測定することになります。もっと恐ろしいのは、電圧が印加されている回路なら感電事故になるという点です。

 「端子の金属部には触れない」とうことであれば「端子の金属部に触れている金属に触れない」も同じ意味だということは「常識」だと思っていましたが、認識の共有ができていなかったようです。こちら側に問題があったわけで、電気の世界における常識(当該分野における基礎)をもう一度説明し直しました。

【注記】この時は簡易的な絶縁抵抗測定だったのでテスタ棒を用いましたが、電圧測定の場合などは先端の金属部で端子を短絡させる危険があります。したがってテスタ棒など用いず、端子にきちんと接続固定できる測定回路を組むべきです。手間がかかっても安全最優先です。

◇   ◇   ◇
 

 人と人の境目、特に分野と分野の境目ではなかなか常識(当該分野における基礎)の共有がむずかしいものです。だからといって放置してよいという話にはなりません。境目における常識の共有はとても重要だと思います。

f:id:me38a:20191022200051j:plain以上
さかてつでした…