作成した図面・資料は対話しながら確認しよう

 設計とは、簡単に言うと「ある物・事象をどのように具体化するか検討すること」です。その検討結果は仕様書、設計書、図面などにまとめられます。

 たとえば製作図面であれば製造現場へ製作指示するためのものですが、この図面に誤りがあれば意図せぬ部品ができてしまい、製品がまとまりません。結果として工程的にも金銭的にも損失が生じますし、お客様の信頼も低下します。このようなことを未然防止するため、設計担当者(作成者)により作成された図面は、他の人(審査者と承認者)により確認されるのが普通です。

 さて、それでは審査者と承認者がそれぞれ個人としてしっかり確認すれば図面の誤りはなくせる…でしょうか?

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 審査者は、作成者が所属している組織(班、係…など)のまとめ者であることが一般的です。承認者は多くの場合、その上位組織(課…など)のまとめ者でしょう。いずれも設計実務以外に組織を取りまとめる業務を持ち、基本的に忙しい人たちです。

 ひとりの審査者に対しては複数の作成者から図面が流れてきます。そして、ひとりの承認者に対しては複数の審査者から審査済図面が集中します。組織というものがピラミッド構造になっている以上、当たり前の話です。では、このような状況で、審査者あるいは承認者が「初めて見る図面の内容を理解し、作成者の誤りや不足を十分に指摘」できるでしょうか? かなり無理がありそうだということはすぐわかりますね。

 一方、作成者はどうでしょうか。昔々、設計担当者だった頃の私は「オレは細心の注意を払って完璧な図面を作成した。誤りなどない。あとは審査・承認のサインさえしてもらえればいい。忙しい方々をじゃまするのも悪いし…」と思っていたのです。

 このような状況でしたから、図面の誤りがぽろぽろ流出しました。現場の作業者から「おい、この図面指示ってどういう意味だ?」という質問が飛んでくればまだよい方で、そのまま誤って製作されてしまい、あわてて修正作業指示書を発行したり…ということさえありました。

 そのうち私は「自分の誤りを自分で摘出するのは困難」ということに気付き、仕事のやり方を変えました。私自身として完璧な(と思っている)図面が完成したら、審査者に回す前にまず他の設計担当者(私と同じく当該分野における専門家)と対話しながら確認するようにしたのです。そうしたら…まぁ、出てくる出てくる、誤りが!

 私「ここはこういう考え方だからこういう構造でこういう図面指示にしたんだ…ありゃ? 指示が抜けてる…」

 私「ここは○○設計基準に基づき××mmの余裕を確保してあるんだ…あれ? 不足している…」

 他「さかてつさん、お客様がこういう取扱いをした場合、ここはぶつかっちゃうよ」

 自分自身が思っていた「完璧」という概念がガラガラと崩れてしまいましたが、図面発行前に数多くの誤りを摘出・訂正できるという点でたいへん大きな収穫がありました。もちろん、製造現場からの質問や修正作業指示書の発行は激減しました。

 「作成→審査→承認」という「境目」だらけの作業ではなく、「作成→【対話】→審査→承認」という具合に人と人の「境目」がない【対話】を入れることにより、数多くの誤りが摘出できるようになったのでした。

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 設計において作成・審査・承認の各作業を個人としてきちんと実施することは必須です。しかし、個人作業の連続では誤りの摘出に限界があります。対話しながら確認することが必要だと思います。もちろん図面以外の資料でも同様です。

 ちなみに、対話において下記(1)がいちばん期待できると思われるかもしれませんが、私自身の経験ではむしろ(2)(3)の方が多くありました。

 (1)誤り、不足等を他の担当者に指摘してもらえる

 (2)誤り、不足等を自ら指摘できる
  ↑しゃべることにより脳が活性化されるから

 (3)説明により、自らの論理性不十分さを顕在化できる
  ↑頭の中がきちんと整理されていないと説明できないから

f:id:me38a:20191022200051j:plain以上
さかてつでした…