小田急電鉄の特急用車両はその一部が博物館に保存されています。製造年代ごとに車内外の雰囲気がいろいろ異なります。今回は帽子掛けという部品に注目してみました。
3000形は1957年に登場しました。
帽子掛けは写真2に示したような形です。最初、丸棒を曲げて溶接したのかと思いましたが、いくらなんでも工数が掛かりすぎるし、形状のばらつきが大きくなります。さらに、太さを変化させるために削るのは大変です。…ということから、ロストワックス製法と推定されます。錆の出方から表面仕上げはクロムメッキのようです。したがって、材質は鋳鉄でしょう。鋳造、表面研磨、メッキ…と手間がかかっています。しかし、美しい形状です。
ISOねじが使用されていますが、年代を考えると新製当初は旧JISねじだったはずです。1967年から翌年にかけて御殿場線乗入れ用改造された際に内装を更新していますので、再取付時にISOねじと交換したのでしょう。
7000形は1980年、10000形は1987年登場です。
帽子掛けは両形式とも写真5のような形です。鋳造ではありますが、材質がアルミ合金に変わっています。メッキ工程が省略されたわけですね。材質物性の関係で、3000形の帽子掛けよりもごつくなっています。
20000形は1991年登場です。
帽子掛けは写真7のような形です。形状と表面状態より、アルミ合金を押出してから一定幅で切断し、その後引っ掛け部のみ半円状に削って製作したことがわかります。表面研磨も最小限という感じで、原価低減を追求したことが見え見えです。
鉄道車両といっても所詮工業製品であり、原価低減というものを意識しなければならないことはよくわかります。ただ、帽子掛けは乗客から直接見える部位であり、意匠面においてそれなりに神経を使った方がよかったのではないか…と、20000形を見て思いました。
以上
さかてつでした…