小田急電鉄キハ5000形改造の関東鉄道キハ751形は乗務員室が狭かったというお話

  

 小田急電鉄キハ5000形は御殿場線乗入れ用として1955年に2両新製された気動車です。ただし座席ピッチが狭く(なんと1320mm!)不評でした。1956年に増備された1両は座席ピッチを1520mmに変更して登場しました。形式はキハ5100形と称し、1959年にもう1両増備されました。

写真1 キハ751形

写真2 キハ753形

 これら4両は1968年の御殿場線電化に伴い職を失って関東鉄道に引っ越し、キハ751形(写真1)とキハ753形(写真2)それぞれ2両ずつになったわけですが、よく見るとあちらこちら違います。

 いろいろな資料を見ると「キハ751形は客室扉間の窓が5つ、キハ753形は4つ」と書いてあることが多いようです。確かにこれは大きな変更点で、上記の座席ピッチ拡大に伴うものです。ただし、乗務員にとっては下記(1)(2)の差異の方が大きかったのではないでしょうか。

 (1)キハ751形:乗務員室長さ1000mm 前頭部半径2500mm
 (2)キハ753形:乗務員室長さ1100mm 前頭部半径5000mm
 (3)国鉄キハ30形:乗務員室長さ1235mm 前頭部半径∞(平面)

 キハ751形の場合は前頭部がかなりきつく湾曲しているため、乗務員室長さ1000mmといっても、実質的にもっと狭くなります。これでは乗務員さんがかわいそう…ということで、増備車では(2)のように乗務員室を長くして前頭部半径もゆるくなっています。キハ751形とキハ753形の印象が異なる理由のひとつがこのあたりにもあります。

 ちなみに(3)の国鉄キハ30形は通勤用として結構窮屈な設計になっていますが、それでも運転台側の乗務員室長さは1235mmあり、(1)(2)に比べるとだいぶ広いと思います。

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 こうして見てみると、小田急電鉄キハ5000形は設計検討が不十分だったように感じられます。それだけの時間的余裕がなかったのだろうとは思いますが、いったん製造してしまうとあとあとまで影響を及ぼすものです。

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さかてつでした…