小田急電鉄キハ5000形、キハ5100形(キハ5000形の改良増備車)が関東鉄道キハ751形、キハ753形に改造された際、追加された客室扉は外吊りでした。ただし、なぜ外吊りになったのか調べてみても、「改造を容易にするため」程度のことしか記されていません。そこで、理由をもう少し考えてみました。
(1)一般的な引戸とするには戸袋を設ける必要がある
(2)そのため戸袋部の側柱移設と周辺補強の必要が生じる
(3)外吊りにすれば少なくとも側柱移設は不要となる
上記(1)~(3)が「改造を容易にするため」の具体的な内容ですが、さらに下記(4)~(6)も検討されたと思われます。
(4)車体幅が2620mmと狭いので外吊りにする余裕は十分ある
(5)下レールを靴ずり延長部とすればホームとのすきまも減らせる
(6)通勤用なので外観の悪さには目をつぶる
関東鉄道常総線には当時すでに車体幅2800mmの車両が投入されていましたから、上記(5)は外吊り扉の「利点」だったのではないでしょうか。ちなみにもともとあった客室扉(引戸)の靴ずりは関東鉄道キハ751形、キハ753形に改造された際、延長されています。
余談になりますが、国鉄キハ30形やキハ35形などは車体幅2800mmでありながら外吊り扉でした。これは次の記事に書いた通り「仕方なく」でした。そのため、扉を薄くしたり、下部を絞ったり、いろいろ工夫して車両限界に収めています。写真1と写真2を比較すると、「外吊り扉」という点では同じであっても、その設計条件がかなり異なっていることを感じます。
ところで、そもそも小田急電鉄キハ5000形の車体幅が2620mmだったのはなぜでしょうか。これについて調べて見ると、「地方鉄道車両定規(車両限界)が2744mmであるため、小田急電鉄における電車の車体幅は2700mmが標準であった。これに対してキハ5000形は、単線区間におけるタブレット交換に備え乗務員室後部の窓に保護網を取付けたため2620mmになった」と記されています。前半はわかるのですが、後半に疑問を感じました。
車両限界の変遷に関しては下記資料がよくまとまっています。これを参照しながら考えてみましたが、「地方鉄道車両定規の下部はプラットホームとの干渉を避けて2642mmに縮小されていたので、客室扉踏段付近の車体下部垂下がりが限界を突破しないよう2620mmに抑えた」ということなのではないでしょうか。「保護網云々…」は副次的なものでしょう。
芳賀昭弘,榎本衛,石塚弘道ほか「ホーム付近の建築限界と車両限界の変遷」『鉄道総研報告2011年1月号』鉄道総合技術研究所,2011
以上
さかてつでした…