小田急電鉄クハ1650形→関東鉄道キクハ1形のブレーキ装置改造

 

 小田急電鉄クハ1650形は電車の制御車で、関東鉄道キクハ1形は気動車の制御車で、いずれも動力源を持っていません。まず、「電車と気動車では動かすための制御回路が違う」ということは、何となくおわかりいただけるのではないかと思います。では、ブレーキ装置はどうなのかというと、似ている面はあるけれどもやはり違っていたのです。

表1 ブレーキ弁の比較

小田急電鉄クハ1650形時代(ACM-R:M24Cブレーキ弁)
 電車時代は元空気溜管式の直通付自動空気ブレーキで、ACM-Rと称していました。Aは自動空気ブレーキ、Cは制御車、Mは制御弁の形式、Rは元空気溜管を意味しています。基本的に自動空気ブレーキですが、先頭車だけは直通空気ブレーキ併用可能となっています。制御弁の性能がイマイチだった時代の産物です。

 「ブレーキ弁により直通管とブレーキ管の圧力を調整し、複式逆止め弁により直通管圧力と制御弁出力圧力の高い方をブレーキシリンダに導く」という考え方は、ガソリン動車用GPSブレーキ装置(G2Aブレーキ弁使用)と同様です。ただし、M24Cブレーキ弁自動空気ブレーキと独立して直通空気ブレーキ操作可能となっている点が、G2Aブレーキ弁と異なっています。

 宣伝になってしまいますが、自動空気ブレーキとは、直通空気ブレーキとは、そしてGPSブレーキ装置に関しては下記書籍がお勧めです。

関東鉄道キクハ1形時代(DA:M23ブレーキ弁)
 気動車に改造された際、ブレーキ装置はDAに変更されました。これはACM-Rと同じく自動空気ブレーキですが、高性能であるA制御弁を用いているため、直通空気ブレーキの併用は不要となりました。技術進歩ですね。

 ACM-Rの構成部品は、双針空気圧力計、M24Cブレーキ弁、C6給気弁、釣合空気溜、M制御弁、ブレーキ管吐出弁、電動空気圧縮機、調圧器、元空気溜、補助空気溜、付加空気溜、14番複式逆止め弁、15番複式逆止め弁、ブレーキシリンダ、車掌弁などでした。しかし、DAへの改造に際し配管以外で再利用できたのは、双針空気圧力計、C6給気弁、空気溜類とブレーキシリンダ程度だったようです。M制御弁とブレーキ管吐出弁は性能の良いA制御弁に置換えられ、電車ではないので電動空気圧縮機とそれ用の調圧器は撤去され、自動空気ブレーキだけなので複式逆止め弁も不要となり…という具合だったはずですから。

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さかてつでした…