小田急電鉄クハ1650形→関東鉄道キクハ1形の台車(ころ軸受化されたTR11)

写真1 キクハ2のTR11

 小田急電鉄クハ1650形だった関東鉄道キクハ1形の台車はTR11でした。写真1はキクハ1形キクハ2のTR11ですが、前後の軸箱が大きな釣合梁で結ばれ、台車枠からの荷重は2本のコイルばねを介して受けています。枕ばねは重ね板ばねです。文字通り板を重ねたばねですが、板同士の摩擦により減衰特性を得ています。客車、電車では釣合梁を有する台車がかなり多く使用されていましたが、気動車の場合、この形態の台車が使われている例はあまり多くありません。

写真2 オハフ61 2734のTR11

図3 軸箱の構造

 さて、キクハ1形の台車形式はTR11ですが、国鉄オハフ61形などに使用されているTR11(写真2)と異なり、ころ軸受(roller bearing)の軸箱に交換されています。もともとの軸箱は平軸受(plain bearing)すなわち車軸の上に軸受金があり、これで荷重を受けています。ずいぶん原始的です。こんな構造で回転するのか…?と思われるかもしれませんが、回転します。車両が走行している間は車軸の回転に伴い両者間のすきまに潤滑油が入るため、それほど摩擦抵抗は大きくありません。しかし、いったん車両が停止してしまうと両者間の潤滑油が切れるため、再度動き出す際には大きな力が必要となります。

 このように、平軸受は構造が単純で耐久性が高いという利点はありますが、もともと駆動力に余裕がない気動車においては摩擦(走行抵抗)を減らすことの方が重要でした。国鉄の場合、1933年登場のキハ36900形(のちのキハ41000形)からころ軸受になっています。ちなみにキクハ1形の場合は、小田急電鉄クハ1650形時代すでにころ軸受に交換されていました。関東鉄道に来てから(気動車になってから)ころ軸受に交換されたわけではありません。西武鉄道などでもころ軸受化したTR11が数多く使用されていました。

 TR11はばね下荷重が大きいためにゴロゴロとした感じで、決して乗り心地が良いとは言えませんでしたが、結局キクハ1形廃車まで使用されました。1980年代のお話です。

【注記】図は、国立国会図書館ウェブサイト掲載『客貨車名稱圖解』から引用しました。著作権保護期間は満了しています。

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さかてつでした…