写真1は関東鉄道キハ700形です。先輩となるキハ703形(写真2)と共にNA4D台車(写真3)を履いています。これに関しては下記の記事でも触れました。
NA4系台車の特徴は、軸箱支持装置(軸箱を台車枠に対してどのように支持してばね性を持たせるか)が「上天秤式」である点です。外観が似ているのでゲルリッツ式と混同されることがありますが、ゲルリッツ式は軸箱上部に重ね板ばねが取付けられているのに対し、この上天秤式の場合は軸箱上部の部材(上天秤)にばね性はありません。台車枠にかかっている車体重量は下記のように伝わります。
台車枠(ごつい、まさに枠)
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コイルばね(ぐるぐる巻きの形をした部品)
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コイルばね内を貫通する棒(下端がコイルばねの下に、上端が台車枠の上に見える)
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上天秤(ほとんど見えないが、棒の上端間にあり)
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軸箱(□に○形の突出部がある部品)
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車軸
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車輪
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レール
写真4は東武鉄道5700系に使用されている台車です。NA4D(写真3)と軸箱支持装置がよく似ている感じですが、軸箱の上に重ね板ばねが見えます。台車枠にかかっている車体重量は下記のように伝わります。
台車枠(ごつい、まさに枠)
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コイルばね(ぐるぐる巻きの形をした部品)
↓
コイルばね内を貫通する棒(下端がコイルばねの下に、上端が台車枠の上に見える)
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重ね板ばね(軸箱の上に見える)
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軸箱(□に○形の突出部がある部品)
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車軸
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車輪
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レール
なんだかえらく面倒な構造ですが、重ね板ばねは減衰性を持たせるために必要でした。
そもそも何のためにばねを用いるかと言えば、レール面の変位に起因する振動を車体とその中にいる乗客になるべく伝えたくないからです。ところがばねだけだと、いったん発生した振動が収まりません。いつまでもふわふわ揺れ続けます。これを抑制するため(減衰させるため)、オイルダンパ(筒内の油が細い穴を通過するときの損失を利用)がよく用いられます。NA4D台車の場合は、枕ばね部(台車の中央付近で車体から台車枠へ荷重を伝える部位)にオイルダンパが取付けられていることがわかります。
それではFS106の場合は…? オイルダンパが見えませんが…。
実は上記の通り、重ね板ばねの減衰特性を利用しているのです。重ね板ばねはその名の通り薄い板ばねを重ねたものですが、たわむときに板ばねどうしがこすれ合い、摩擦が生じます。それによる損失で減衰特性を得るのです。当時、良質のオイルダンパを作れなかったため、このような方式が採用されたのでした。
ちなみにFS106(ゲルリッツ式、重ね板ばね使用)は1951年、NA4系の台車(オイルダンパ使用)は1953年から製造されており、この頃の急速な技術進歩を感じることができます。
以上
ちかてつの
さかてつでした…