1か月ほど前に『国鉄ガソリン動車のGP・GPSブレーキ装置』を執筆中である旨、記事にしましたが、ようやく原稿作成終了しました。これから推敲という段階です。
資料を読みながら解説図などを作成してみると、思っていた以上に昔の方々が工夫をしていたんだなということを感じました。以下、いくつかの部品に関して記します。なお、図の一部は国立国会図書館デジタルコレクションから引用し、私が編集加工しました。引用図はすべて著作権保護期間が満了していることを申し添えておきます。
1.調圧器
調圧器とは、ブレーキ装置などに使われる圧力空気をつくる空気圧縮機の圧縮機能を動作/停止させるためのものです。写真1のような外観です。内部構造は図2のような感じです。
動作に関しては、図3をご覧いただくと概略がわかりやすいと思います。
基本的に、入れ弁が上昇すると空気圧縮機のアンローダ弁に圧力空気が入り、圧縮機能が停止します。逆に入れ弁が着座(降下)するとアンローダ弁の圧力空気が抜け、圧縮機能が動作します。
それなら「入れ弁だけあればよいではないか」と思ったのですが、よく考えてみると入れ弁だけでは元空気溜圧力6kgf/cm2付近で入れ弁が頻繁に上昇⇔着座してしまいます。このような不安定状態を避けるため、入れ弁の前段に7kgf/cm2で動く切り弁を挿入し、図4のように大きな不感帯を持たせているということが理解できました。
純粋に機械的な構造でここまで確実に動作するよう工夫されていることに感動しました。
2.安全弁
圧力が上昇しすぎた場合に、その圧力空気を排出するためのものです。たとえば、元空気溜の近くに設置されています。
正直申して、写真5の外観から図6のような内部構造は想像し切れませんでした。「圧力が上がるとばねが圧縮されて弁が弁座から離れて排気されるんだろう」ぐらいにしか思っていなかったわけです。しかし、調圧器と同じく動作安定のため、排気開始と終了の圧力に差が出るよう(不感帯ができるよう)工夫されているのです。
説明文を本書から転記しておきます。
a部圧力が設定値より高くなると、弁1が弁座5からわずかに離れる。すると弁1において圧力を受ける面積が一気に広くなるため上昇する力も大きくなり、弁心棒2が袋ナット7に突き当たるまで上昇する。圧力空気は赤→印の経路でc 穴から排出される。
a 部圧力が低下すると、ばね3に押されて弁1は降下し始める。d 空気通路から弁上部 s 室に青→印の経路で圧力空気が流れ込んで弁1を上から押すため、弁1の降下は加速されて確実に弁座5に着座する。なお、弁上部 s 室に流れ込んだ圧力空気は小さな f 穴から徐々に漏れて大気圧に戻る。
へーという感じですね。
3. P制御弁の動作
これに関しては本書の一部を掲載します。制御弁としてはいちばん簡単なのではないかと思います。実にうまく考えられています。しかし、ゆるめ重なり位置がなく、階段ゆるめできませんでした。
4. GP・GPSブレーキ装置とはどういう存在だったのか
もともとこのGP・GPSブレーキ装置は簡便さを狙ってP制御弁を用いましたが、操作性向上のため部品を追加して構成を変更する必要が生じました。それに伴い不具合も発生しましたが少しずつ解決され、キハ42000形に至ってGPSブレーキ装置は一応完成したと言えましょう。しかし、同様の機能であれば単純な構成の方がよいのは明らかで、戦後量産されたディーゼル動車においては、性能が良いA制御弁を用いた一般的なブレーキ装置になりました。
結果論ではありますが、国鉄車両用としてGP・GPSブレーキ装置は中途半端な存在だったということになります。だからといってムダだったわけではないと思います。振り返って「中途半端な存在だった」と言えるということは技術進歩したことにほかならないわけですから。
以上
ちかてつの
さかてつでした…