ある坂道に、20%と記された道路標識が設置されています。歩いてみると結構急な坂道ですが、それでもクルマは路面とゴムタイヤの摩擦で登っていきます。
写真3は、約200‰(パーミル)の勾配を走る電車の車内風景です。200‰は千分率による標記で、百分率だと20%、つまり写真1および2の勾配と同じです。鉄道は鉄のレールと鉄の車輪を使うのが一般的で、クルマと比べると坂道に弱く、25‰というと結構急な勾配という感覚です。しかし百分率だと2.5%という小数になってわかりにくいため、千分率を使います。ちなみに2.5%の勾配はクルマにとって何の苦もありません。
さて、写真3で何気なく200‰という勾配を出しましたが、鉄レールと鉄車輪の間の摩擦だけで登れるものでしょうか? はい、無理です。それではどうなっているかというと、2本のレールの間にラック(歯車を直線状にしたもの)が設置されており、車両側の歯車とかみ合うようになっています。写真4の鉄道はReiner Zahnradbahn(純歯車式鉄道)に分類されます。つまり車輪はただ単に車体を転がり支持するだけで、駆動力は歯車によりラックに伝達されます。当然ですが、全線にラックがないと走れません。
ちなみにGemischter Zahnrad- und Adhaesionsbahn(歯車-粘着混合式鉄道)もあります。多くの区間は通常の粘着式で走行し、急勾配区間のみ歯車式で登ります。
Reiner Zahnradbahnの場合は、平坦な区間の分岐器であってもラックが必須です。そのため、写真5のように実に愉しい構造になっています。
ところで、粘着(英語でもadhesion)という表現はこれまた鉄道分野独特ですね。なんだかゴキブリホイホイの粘着剤(adhesive)を車輪とレールの間に塗りながら走っているみたいですが、そうではありません。摩擦(friction)という意味です。
以上
ちかてつの
さかてつでした…