GPSと自動ブレーキ

 鹿島鉄道キハ600は鉄道省キハ42000形として産まれましたが、当初のブレーキはGPS式でした。ちなみにGPSの意味は下記です。

  G:ガソリン動車用
  P:自動空気ブレーキに用いている制御弁の形式
  S:直通空気ブレーキ

 つまり「P制御弁を用いた自動空気ブレーキに直通空気ブレーキを複合させた、ガソリン動車用のブレーキ装置」ということです。連結運転時の自動空気ブレーキによるフェールセーフ性確保と単行運転時の直通空気ブレーキによる操作性の良さを両立させた点が特徴です。

 しかし、世間一般でGPSというとGlobal Positioning Systemすなわち全地球測位システムと解釈されます。つまり「上空にある複数の軍事用人工衛星からの信号により自分の3次元的位置を知るシステム」ということになります。

 もちろんキハ42000形(製造初年1935年)にGlobal Positioning Systemなどありませんから、「自分自身の3次元的位置を知りながら最適なブレーキをかけるシステム」などでは決してありません。

 さて、もうひとつ誤解を招きそうなのが「自動空気ブレーキ」です。

 世間一般で自動ブレーキというと、「カメラやレーダなどにより周囲の状況を検出し、その状況変化に応じて必要な場合に運転手の意志とは別に自車にブレーキをかけるシステム」ということになります。何が「自動」なのかというと、「運転手の意志とは別に機械が判断して」ブレーキがかかるという点なのだろうと思います。

 それに対して鉄道界で使われる「自動ブレーキ」(あるいは自動空気ブレーキ)は、連結器破損等により「列車分離が発生した場合に」自動的にブレーキがかかるという意味です。直通空気ブレーキがフェールアウト(列車分離が発生するとブレーキが効かなくなる)に対して、フェールセーフ性があるという点が自動ブレーキの「自動」が意味するところです。まあ確かに「運転士の意志とは別に機械が作動して」ブレーキがかかるという点では世間一般の概念と似ていないわけではありませんが、やはりずれはありますね。

 GPSにしても自動ブレーキにしても、時代や分野が変われば意味するところは大きく異なります。注意が必要ですね。

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ちかてつ
さかてつでした…