1.はじめに
鉄道車両が走る「道」を世間一般ではレールとか線路とか称していますが、それぞれの単語が何を示すのか…というお話です。
2.JIS E1001
技術分野に限った話ではないと思いますが、専門的になればなるほど用語が明確に定義されるものです。人によって用語の解釈が異なるといろいろと問題が起こり、その影響が大きいからです。
鉄道線路に関する用語の定義として、JIS E1001があります。JISは日本産業規格のことで、2019年の法律改正以前は日本工業規格と称していました。Eはその中の鉄道部門を示しています。こんな規格があること自体、世間一般からすれば技術分野が堅苦しいと感じる所以なのだろうと思います。
3.鉄道線路に関する用語
それではJIS E1001記載の用語定義を並べます。
【レール】車輪を直接支持,誘導する部材
【まくらぎ】レールを支え,荷重を道床などに分布させる部材
【軌きょう】 レールとまくらぎとを,はしご状に組み立てたもの
【道床】レール又はまくらぎを支持し,荷重を路盤に分布する軌道の部分
【軌道】施工基面上の道床(スラブを含む),軌きょう及び直接これらに付帯する施設
【路盤】軌道を支えるための構造物
【線路】列車又は車両を走らせるための通路であって,軌道及びこれを支持するために必要な路盤,構造物を包含する地帯
いやぁ、一応日本語のようですが、日常の言葉と別世界ですね。それに枕木をまくらぎとひらがなで書いてあったりします。でも仕方ありません。これが用語の定義というものです。
4.現物の写真
用語の定義を見ていてもわかりにくいので、現物の写真を示します。それぞれに関して実はさまざまな種類がありますが、一般的と思われるものを示してあります。
積み上げられている鋼製の細長い物体がレールです。このレールで車輪が支えられ、その車両の進行方向が定まります。
写真2の手前の方に積み上げられているものがまくらぎです。この写真はコンクリート製まくらぎの例です。まくらぎはレールを下から支え、レールから伝わる車両の荷重を道床(写真4)に伝えます。
写真3は軌きょうです。レールとまくらぎを固定してはしご状に組み立てたものです。漢字で書くと軌框です。
写真4は道床です。「どうしょう」と読みます。軌きょうが無い道床だけの写真を探すのに苦労しました。この敷き詰められた砕石が道床です。
写真5は軌道です。ある路線の高架化工事の現場で撮影したものですが、道床の上に軌きょうがあることがよくわかります。これらを合わせたものが軌道です。
写真6は写真5の手前側で、路盤がむき出しになっています。軌道を支えるための構造物であることがわかります。
写真7は線路です。線路は路盤とその上の軌道だけでなく、その周辺(構造物を包含する地帯)も含みます。
5.まとめ
鉄道車両が走る「道」に関する用語は、JIS E1001で定義されています。レール、軌きょう、軌道、線路はいずれも異なった範囲を示します。
以上
ちかてつの
さかてつでした…