1.はじめに
梁とは水平方向に長い部材で、それにかかる荷重を柱に伝える機能を有しているものを称します。例えば鉄筋コンクリート造の建物の天井と壁との間にある水平方向の「でっぱり」です。この梁は、壁と一体あるいは平行…というのが普通です。
ところが、壁に対して梁が斜めになっており、さらにその梁が部屋を突き抜けている建物があるのです。なぜこのような構造になっているのでしょうか?
2.当該物件
写真1は篠崎駅付近です。赤い線は地面を開削した範囲で、建物⑨はこの新宿線トンネル(篠崎駅)の真上に建っています。今回疑問を感じた物件は、建物⑨と道路を挟んだ所にある建物⑮です。
【地下鉄好きの方へ】篠崎駅のかなり北方まで開削工法で建設されたのはなぜかという記事に「建物⑮の新宿線トンネル(篠崎駅)と干渉する部分は低層になっている」と記したのですが、実は違和感がありました。写真1をよく見ると、低層部だけでなく高層部も新宿線トンネルと干渉しているように見えたからです。
写真2は当該物件建物⑮の全景です。写真右側には建物⑨が建っており、左右方向に新宿線トンネル(篠崎駅)があります。こうして見ると何がどう不思議なのかわかりませんが…
写真3は写真2を拡大したところです。斜めの梁がはっきり見えます。右側は部屋の中に入り込んでいるようですが、外からは確認はできません。しかし、ありがたいことに不動産サイトで室内の写真を見ることができます。
建物⑮の名称(石上ビル3)を入力して室内写真を見ると…をを! 室内の天井を斜めに梁が突っ切っています! 壁に対して斜めの梁がある部屋…なんとも異様です。
この斜めの梁は新宿線トンネル(篠崎駅)と干渉しないぎりぎりの位置になっており、その外側は新宿線トンネル上にオーバーハングしています。
写真4は、建物⑮を西側から見た状態です。当初私は建物のいちばん外側の壁に柱があるように思い込んでいたのですが、こうして見ると柱でもなんでもなく、単なる飾りであることがわかります。建物を支えている柱と梁は、外壁の内部にあるのです。
言葉だけだとわかりにくいと思うので、略図(図5)を描いてみました。
リンクを貼り付けた過去記事の写真6ですが、建物⑮の梁が斜めであることを知った上でこの写真を見るとすべてを理解・納得できます。地下鉄トンネルの上の建物ってむずかしいんですね…。
3.まとめ
都営地下鉄新宿線篠崎駅の近くに、梁が壁に対して斜めの建物があります。新宿線トンネル(篠崎駅)との干渉を避けるためにこのようになっているものと考えられます。
駅前の歩道の隅で当該物件の写真を撮っていると、街行く人々が知らんぷり…のような顔をしながら、実は当該物件をちらちら見ています。そして…不思議そうな表情をしています。斜めに梁が突き抜けていることに気づいている方はほとんどいないようです。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。