【地下鉄好きの方へ】篠崎駅のかなり北方まで開削工法で建設されたのはなぜか

f:id:me38a:20200909232150j:plain

1.はじめに

 都営地下鉄新宿線篠崎駅は開削工法で建設されました。しかし、篠崎駅の北方に関してはその範囲がかなり長く伸びています。地上に大きな影響を与える開削工法を長い区間に渡って採用したのはなぜなのでしょうか?

2.千葉県営鉄道北千葉線の建設取りやめと両渡り線の設置

 都営地下鉄新宿線新宿駅-篠崎駅は1986年9月までに開業済でしたが、篠崎駅(東京都江戸川区)から本八幡駅(千葉県市川市)までのたった1駅区間が手間取り、新宿駅-本八幡駅が全面開業したのは1989年3月のことでした。

◇   ◇   ◇
 

 都営新宿線は現在本八幡駅が終点になっていますが、もともと本八幡駅から千葉ニュータウンまで「千葉県営鉄道北千葉線」として千葉県が建設するはずでした。ところが千葉ニュータウンの沿線人口は思ったようには増えず、最終的に千葉県として本八幡駅から先の建設を取りやめてしまったのです。

 困ったのは東京都で、ひとつ手前の篠崎駅までだと新宿線が中途半端な存在になってしまいます。そこで東京都が千葉県に地下鉄を建設することになりました。もちろん東京都議会と千葉県議会で承認を得ることが必要になり、3年近くかかってしまったというわけです。

 当初の予定通り本八幡駅まで一気に開業していれば篠崎駅は単なる中間駅となるはずでしたが、上記のような理由で暫定的に終端駅ということになりました。そうすると、新宿方面から来た列車が折返すための設備が必要となります。そこで、篠崎駅の北方(本八幡寄り)で東行線と西行線を両渡り線(写真11参照)により結び、本八幡寄りのシールドトンネルを引上げ線として使うようにしました。この両渡り線を新たに設置する場所を確保するため、篠崎駅北方(本八幡寄り)の函型トンネル(開削工法で建築した区間)を当初の予定より伸ばしたのです。

 千葉ニュータウン計画がうまくいかなかったため、篠崎駅北方の開削工法建設区間が伸びたわけです。「風が吹くと桶屋がもうかる」みたいですね。

3.空中写真

f:id:me38a:20200909232214j:plain

写真1 1984年10月撮影

f:id:me38a:20200909234243j:plain

写真2 2019年6月撮影

 写真1は新宿線篠崎駅まで部分開業する約2年前の状況です。写真2は35年後の同一範囲です。白い「○数字」は基礎が新宿線トンネルと干渉していない建物、黄色い「○数字」は新宿線トンネルの上に建っている建物を示します。

 篠崎駅のプラットホームは二つの換気塔の間ですが、それより北方すなわち公園(篠崎二丁目公園)までが開削工法を延長した区間です。公園より先は単線シールドトンネル並列になります。篠崎駅暫定開業時、単線シールドトンネルは江戸川(都県境)の手前までしか開通しておらず、この2本のトンネルを引上げ線として列車折返しを行なっていました。

 本八幡駅まで全面開業したのち篠崎駅北方の両渡り線は撤去され、保線用機材を置く場所になっています。このあたりのトンネル内状況は、下記のYouTube東京都交通局公式チャンネル動画により確認できます。

東行線:【地下鉄】都営新宿線 前面展望(4倍速Ver.)Toei Shinjuku Line frontview(https://www.youtube.com/watch?v=m3K-H32dL5U)

 9:22 篠崎駅発車
 9:23 両渡り線跡通過開始
 9:24 両渡り線跡通過終了
 9:25 トンネルが開削工法(四角い断面)からシールド工法(丸い断面)に移行

西行線:【地下鉄】都営新宿線急行 前面展望①(本八幡~大島)(https://www.youtube.com/watch?v=HBPTwqr93hE)

 2:46 トンネルがシールド工法(丸い断面)から開削工法(四角い断面)に移行
 2:47 両渡り線跡通過開始
 2:51 両渡り線跡通過終了
 2:52 篠崎駅通過開始

4.現地の状況

 それでは現地の地上はどのような状況なのでしょうか。

f:id:me38a:20200909234313j:plain

写真3 篠崎駅

 写真3は、篠崎駅前です。建物⑨は篠崎駅真上の建物で、ライフ篠崎店が入っています。新宿線トンネル(篠崎駅)は建物⑫と建物⑮の下を右奥に向かって進んでいます。

 

f:id:me38a:20200909234332j:plain

写真4 新宿線の真上

 写真4は、篠崎駅真上の建物⑨の脇から新宿線が進む方向を見た状態です。建物⑫、建物⑭、建物⑮は、一部が新宿線トンネル(篠崎駅)の上にかかっています。

 

f:id:me38a:20200909234350j:plain

写真5 新宿線の真上

 写真5は、篠崎駅北方から見た状況です。建物⑮の新宿線トンネル(篠崎駅)と干渉する部分は低層になっています。

 

f:id:me38a:20200909234405j:plain

写真6 新宿線の真上

 写真6は、写真5よりさらに北方から撮ったものです。新宿線は写真奥から右手前の換気塔の下に向かって斜めに走っています。建物⑯は新宿線トンネル(篠崎駅)とは干渉していません。

 

f:id:me38a:20200909234422j:plain

写真7 換気塔

 写真7は換気塔を南側から見た状態です。「この下に地下鉄あり」と自己主張しているように見えます。

 写真7の奥に見える建物⑰は新宿線トンネル(篠崎駅)の脇に建っています。

 

f:id:me38a:20200909234438j:plain

写真8 新宿線の真上

 写真8も新宿線の真上の風景です。新宿線トンネルは建物⑰と建物⑱の間を奥に向かって突き進んでいます。この下あたりから両渡り線の跡(保線用機材置場)が始まっているものと思われます。

 

f:id:me38a:20200909234455j:plain

写真9 建物⑰

 写真9は、新宿線トンネルのすぐ脇に建つ建物⑰です。奥に見える換気塔と建物⑭は新宿線トンネル(篠崎駅)の真上になります。

 

f:id:me38a:20200909234518j:plain

写真10 篠崎二丁目公園

 写真10は、篠崎二丁目にある篠崎二丁目公園です。公園名に「町」が入らないところがおもしろいと思います。

 新宿線はこの篠崎二丁目公園まで開削工法で建設され、これより先(写真10左手前)は単線シールドトンネル並列になります。公園の下には両渡り線跡(保線用機材置場)があります。 

f:id:me38a:20200909234538j:plain

写真11 両渡り線(JR南船橋駅の例)

 参考のため、両渡り線の例を写真11に示します。これは都営地下鉄新宿線のものではなく、JR京葉線南船橋駅のものです。ごらんの通り、2本の線路の間を方向にれるようになっています。

 

5.まとめ

 都営地下鉄新宿線篠崎駅は開削工法で建設されましたが、北方はその範囲がかなり長く伸びています。これは篠崎駅が暫定的に終端駅となり、新宿方面から来た列車が引上げ線で折返すための両渡り線を設けてあったからです。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。