【街好きの方へ】公園地下に存在する巨大空間の謎

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1.はじめに

 ある公園の地下に巨大空間が存在すると言われています。いったいどこに、どのような理由で空間が存在するのでしょうか?

2.巨大空間はどこにあるか

 『今だから話せる都営地下鉄の秘密』は、東京都交通局に勤めていた方がお書きになった本ですが、これには次のような内容が記されています。

 (1)千葉県営鉄道北千葉線の建設取りやめに伴い、篠崎駅暫定開業になった。
 (2)江戸川の手前(東京都内)でトンネルを止めることになった。
 (3)上記(2)のトンネルを引上げ線として使うように計画変更した。
 (4)折返し用の両渡り線を新たに設置するよう計画変更した。
 (5)篠崎駅の開削範囲を当初計画より伸ばして上記(4)の場所を確保した。
 (6)シールドマシン折返し用の立坑を江戸川の近くに追加で掘った。

 つまり、篠崎駅北方の開削範囲の端にある立坑から単線シールドトンネルを追加立坑(江戸川近く)まで掘り、そこで折返して篠崎駅北方の立坑までもう片方の単線シールドトンネルを掘って複線にしたとのことです。

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写真1 1984年10月撮影

 それではこの追加立坑はどこにあるのか…ということで、国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」で篠崎駅暫定開業(1986年9月)の数年前の写真を探しました。この頃であれば、立坑が写っている空中写真が見つかるかもしれないと思ったのです。

 その結果見つけたのが写真1です。この写真は篠崎駅まで開業する2年ほど前の状況で、赤○印の場所が掘削されています。ここは現在篠崎本郷公園になっています。両渡り線は現在の篠崎二丁目公園付近の地下に設置されていましたが、そこから赤○印の場所まで200m少々ありますので、引上げ線の長さとしても納得できます。

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写真2 1988年2月撮影

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写真3 2019年8月撮影

 写真2は篠崎駅暫定開業(1986年9月)後の写真ですが、篠崎駅付近の開削範囲、追加立坑の場所等はきれいに埋められています。

 写真3は最近の状況です。開業後30年以上経過しているために建物は建替えられたりしていますが、篠崎駅開削区間端部の立坑と追加立坑の場所は、それぞれ篠崎二丁目公園と篠崎本郷公園として建物を建てないまま残されています。これらの公園の下には巨大空間が存在するのです。

 以下、地上の状況に関して記します。なお、写真中の白い「○数字」は基礎が新宿線トンネルと干渉していない建物、黄色い「○数字」は新宿線トンネルの上に建っている建物を示します。

3.篠崎駅暫定開業時に完成した区間

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写真4 篠崎二丁目公園からの風景

 篠崎二丁目公園から篠崎本郷公園までが、篠崎駅暫定開業時に完成した区間です。

 写真4は、篠崎二丁目公園から新宿線本八幡方面を見たところです。私の足元には大きな地下空間が広がっています。

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写真5 新宿線の真上

 写真5のあたりは単線シールドトンネル並列になっています。現在は東行線と西行線として使われていますが、篠崎駅暫定開業時は2本の引上げ線として使用されていました。この写真の地下に電車が止まって折返していたわけで、何とも不思議な感じがします。

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写真6 新宿線の真上

 写真6は写真5と同じ場所で反対方向を撮影したものです。建物④右奥側の低い部分の地下に新宿線トンネルがあるのだろうと思ったのですが、実は左手前の高い部分の地下にもトンネルがあります。周囲に高い建物が無いため4階建を「高い」と感じてしまいましたが、この程度の階床の建物ならトンネル真上に建設しても問題ありません。

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写真7 篠崎本郷公園

 写真7の公園の地下には、篠崎駅暫定開業に際して追加で掘られた立坑があります。

 新宿線本八幡駅まで全線開業したのは篠崎駅暫定開業後の3年近くあとですから、ここまでのトンネルとこの先のトンネルでは、建設時期に約3年のずれがあるということになります。

4.全線開業時に追加完成した区間

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写真8 新宿線の真上

  この先は、本八幡駅まで全線開業した際に追加建設されたトンネル区間になります。江戸川を渡って千葉県に入るまで、単線シールドトンネル並列です。

 写真8は、篠崎本郷公園の近くです。そうと言われないと、この真下に新宿線トンネルがあることなど気づきません。

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写真9 新宿線の真上

 写真9は、江戸川の堤防から新宿線トンネルの真上を見たところです。

 写真奥の赤↓印篠崎駅の真上の建物(ライフ篠崎店)です。そこから私の足元まで一直線に新宿線は突き進んできます。建物⑨も建物⑩も新宿線トンネルの真上です。写真9手前の赤○印は河川占用標識です。

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写真10 河川占用標識

 写真10は、写真9手前の赤○印に設置されている河川占用標識です。この真下に新宿線のシールドトンネルが2本ある旨、明記されています。

 埋設深さの項目に記されているYPとはYedogawa Peilすなわち江戸川の水位の基準高さを意味します。

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写真11 江戸川

 写真11は、河川占用標識(写真10)のある場所から堤防に登り、対岸を眺めたところです。

 江戸川の向こうは千葉県市川市で、赤↓印市川市文化会館です。このすぐ右側を都営地下鉄新宿線が走っています。ここから先、千葉県を走る東京都の地下鉄になるわけです。

5.まとめ

 篠崎二丁目公園と篠崎本郷公園の地下には、巨大な空間(立坑)があります。これはシールドマシンを発進、折返しするためのものです。篠崎本郷公園の地下の空間は、千葉県営鉄道北千葉線の建設取りやめ(篠崎駅暫定開業)に伴い追加で設けられたものです。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。