【都市伝説好きの方へ】東京ドーム真下を地下鉄が走っているというのは本当か?

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1.はじめに

 「東京ドーム真下を地下鉄が走っているらしい」という都市伝説があります。確かに、地図を見ると東京メトロ南北線が真下を走っているように記載されています。しかし「地図は必ずしも正しくない」わけですから、本当に東京ドーム真下を走っているかどうか疑わしくもあります。真実はどうなっているのでしょうか?

2.南北線は東京ドーム真下を走っている

 今回の件、結論を先に申すと、東京メトロ南北線は東京ドーム真下を走っています。南北線建設史には、南北線が東京ドーム真下を走るようになった経緯が記載されています。概略は下記の通りです。

 まず、後楽園駅は他路線(丸ノ内線三田線大江戸線)接続、周辺施設(東京ドーム、文京区役所等)連絡、等々を考慮して千川通の地下に設置することになりました。

 次に、飯田橋駅後楽園駅を最短経路で結ぶと小石川後楽園の真下を貫くことになります。しかし小石川後楽園特別史跡に指定されていて「離隔確保」が必要とされる状況であり、真下を貫く経路は許されません。となると残された選択肢は「飯田橋駅から外堀通の下を東に向かい、東京ドームの南で北に進路を変え、東京ドーム真下を通って千川通の後楽園駅に至る」…ということで、東京ドーム真下を通過することになったのです。

 小石川後楽園をよけるために、大きく迂回して東京ドーム真下を通る必要が生じたわけです。都市伝説を創るために東京ドーム真下に通したわけではありません。

3.東京ドーム真下をどの程度の深さで通過しているか

 東京ドームの基礎杭は外野側(北側と西側)がいちばん深く、1階床面から27.2mの地下まで達しています。この基礎杭を避け、さらに大江戸線、下水、共同溝なども避けるため、後楽園駅は地下約40mに設置されました。

 南北線建設史には東京ドームおよび南北線トンネルの断面図が記載されています。この区間南北線は外径9.8m複線シールドトンネルですが、東京ドーム外野側の基礎杭先端からさらに4mほど深い地下を走っています。すなわち、トンネル上端で深さ31m程度、下端で深さ41m程度ということになります。

 東京ドーム真下を通過した後は35‰で後楽園駅まで登りますが、あまり距離がないためたいして浅くならず、後楽園駅は上記の通り約40mの深さです。

4.地上風景

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写真1 空中写真(2017年8月)

 写真1には東京ドームが大きく写っています。その左に広がるのは特別史跡小石川後楽園です。

 外堀通の下を東に進んできた南北線は、半径203m左曲線で北に向きを変えます。真上には、住宅金融支援機構後楽園ホールなどの建物があります。その後南北線は東京ドームの真下を貫き、後楽園駅に至ります。

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写真2 住宅金融支援機構

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写真3 住宅金融支援機構

 写真2の手前は外堀通です。南北線は、左手前から奥に向かって半径203mで曲がっています。写真3は住宅金融支援機構の北東から見た状態で、右奥から左手前に向かって南北線が走っています。

 写真2および写真3を見て気づくのは、住宅金融支援機構の建物は柱が四隅にしかないということです。写真1は建設史を基に南北線経路を空中写真に追記したものですが、住宅金融支援機構の建物の壁面中央(柱が無いところ)を南北線が通過しているように見えます。ただし、外堀通側は壁面中央からずれているようにも見えます。

 残念ながら住宅金融支援機構の建物の基礎構造に関しては調査できていません。南北線が壁面中央を通過しているのか、あるいは壁面中央を通過していない(特殊な基礎構造になっている)のか、現時点不明です。

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写真4 後楽園ホールと黄色いビル

 写真3を撮影した場所で体の向きを180度変えると写真4のように見えます。南北線は、写真右手前から左奥に向かって半径203mで曲がっていきます。黄色いビル(写真右)の竣工は1973年と1977年、後楽園ホール(写真左)の竣工は1962年ですが、建設史にはこれらの建物に関するアンダーピニング(基礎の下受)の記載はありません。

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写真5 小石川後楽園

 写真5は写真4と同一地点で撮影したものです。写真左側は小石川後楽園で、右は後楽園ホールです。これらの奥にちらりと見えているのは東京ドームです。南北線は、写真右手前から奥に向かって深い地下を突き進んでいます。こうして見ると、どこを地下鉄が走っているのかわかりません。

5.まとめ

 東京ドーム真下を東京メトロ南北線がその名の通り南北に走っています。その深さは約40mです。また今回の区間に関して、巷の地図はほぼ正しいことがわかりました。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。