道路に面した微小段差の謎

1.はじめに

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写真1 工事中の空中写真(1963年6月)

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写真2 近年の空中写真(2017年8月)

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写真3 牛込天神町交差点(写真2の拡大)

 「東京メトロ東西線のトンネルはどこにあるか」を連載しています。
 前回に続き、クランク状(きついS字曲線)になっている牛込天神町交差点を東西線がどのように通り抜けているかに関してですが、今回は交差点東側の状況です。

2.牛込天神町交差点

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写真4 牛込天神町交差点(西方から撮影)

 早稲田通の牛込天神町交差点を西方から望むと(写真4)、東西線がこの交差点をどのように通り抜けているかよくわかります。東西線は建物③の非常階段の下と建物④の下を半径200m右曲線で通過しています。その後すぐに半径500m左曲線になって建物⑦の下をかすめ、早稲田通の下にもぐり込んでいます。

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写真5 交差点東側(西方から撮影)

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写真6 交差点東側(東方から撮影)

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写真7 建物⑧の微小段差

 牛込天神町交差点の東側には、建物⑦と建物⑧が早稲田通に面して建っています(写真5および写真6)。建物⑦の下に東西線トンネルがあるのは間違いありませんが(写真3)、建物⑧に関してはきわどいところです。ただし写真3よりわかるように、建物⑧付近はまだ半径500m左曲線であり、東西線トンネルは建物⑧の敷地にわずかに食い込んでいると判断するのが正しそうです。実は建物⑧の前には微小段差があり、その段差部が早稲田通に対して斜めになっているのです(写真7)。東西線トンネルの端がこのあたりにあることと符合します。
 建物⑧が早稲田通に対してわずかに斜めに建っているからたまたまこうなっただけ…というのが現実なのかもしれませんが…謎です。

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写真8 A線トンネル半径500m左曲線

 東西線の電車に乗ってトンネルの中を観察すると(写真8)、牛込天神町交差点をどのように通過しているかよくわかります。写真8は半径500m左曲線のほぼ中央ですから、建物⑧の前あたりになります。しかしまあ、半径200m右曲線と半径500m左曲線を組み合わせて民有地の下への食い込みを最小限に抑えながら、うまいことトンネルを構築したものだと思います。

3.道路拡幅に備えて建物が後退しているというお話

 余談ですが、写真3を見ると建物⑥の南西角が大きく隅切りされており、建物⑧も南側1/3程度が低階床になっていることがわかります。そのほか、早稲田通を東にたどっていくと、建物の早稲田通側が低階床になっていたり空地(駐車場)になっていたりします。これは早稲田通の拡幅に備えて建物を後退させているからです。
 計画通り早稲田通が拡幅されると建物⑦は取り壊されて道路になり、建物⑧の低階床部も撤去されて道路になります。その時、東西線トンネル半径500m左曲線部は完全に道路の下になるというわけです。建物⑧がトンネルの上か否かということを議論できるのも今のうちです。

4.まとめ

 東西線は狭い道幅に対応して上下2段積みトンネルで進みますが、やはり民有地の下に食い込み、建物⑦の下を通り、建物⑧の下をかすめています。早稲田通が拡幅される際には、交差点東側の東西線トンネル上の建物は取り壊されます。建物⑧の微小段差も消滅することでしょう。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】
写真1~3は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(MKT636-C7-18、CKT20176-C17-20)を私が編集・加工したものです。