中野駅北側道路「工 マーク」の謎

1.はじめに

 「東京メトロ東西線のトンネルはどこにあるか」を連載し始めました。
 今回は、中野駅東側の経路に関してです。

2.中野駅から白桜小入口交差点までの路線経路

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写真1 工事中の空中写真(1965年8月)

 東西線中野駅から高田馬場駅までは1966年(昭和41年)3月に開業しています。この頃の空中写真を国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」で探したところ、1965年8月に撮影した写真(写真1)が見つかりました。開削工法で建設したためトンネル直上にはまだ建物がほとんどなく、東西線の経路がたいへんよくわかります。

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写真2 近年の空中写真(2017年5月)

 開業から半世紀以上経過した同一範囲の空中写真(写真2)を参照すると、もうどこに東西線のトンネルがあるのか全くわかりません。しかし実は、中野駅から白桜小入口交差点までの間に東西線の換気口が6か所あります。現地でこれらを確認した後にGoogleマップ航空写真でその位置を照合すると、当たり前の話ですが写真1の経路と一致しました。

3.今回記事の範囲

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写真3 中野駅東側北部(写真2の拡大)

 今回ご紹介するのは、中野駅東側、中央線の北側(写真3)です。中野駅においては、北から順に下記のように線路が並んでいます(プラットホームの区分ではありません)。
  JR中央線快速(上下線)
  JR中央線各停(上り線)
  メトロ東西線
  JR中央線各停(下り線)

 中野駅を出発した東西線A線の電車はすぐ地下にもぐります。35‰の勾配を下りながら半径800mの左曲線と右曲線でS字状にうねり、中央線の線路をくぐって北側に出ます。

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写真4 中央線北側(西側から撮影)

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写真5 中央線北側(東側から撮影)

 中央線の北側には道路があり(写真4~5)、このあたりで東西線のトンネルは道路の下にもぐり込んできます。

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写真6 中央線沿いの駐車場

 中央線北側の道路を東へ進むと、線路沿いに駐車場があります(写真6)。道路との境目にはポールが立っていて、「ここは駐車場であるぞ。道路ではないぞ。」と強く主張しています。初めて現地を歩いた時、この駐車場の下が東西線のトンネルなのだろうと思いました。
 このポールの根元を見ると、工(こう)マーク①が路面に打ち込まれています。これは日本国有鉄道の用地を示す境界標で、JRになった現在も線路周辺の至るところに存在します。どうやらこの駐車場はもともと国鉄の土地のようです。よく見ると工 マーク①の少し右側(北側)にも境界標があります。「こちらは帝都高速度交通営団のSマークだろう」と思いながら見てみると…工でした(工 マーク②)。

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写真7 道路上の「工 マーク」

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写真8 東西線の真上の風景

 よくわからなくなり、帰宅してから建設史、地図、昔の空中写真、等々を再確認しました。その結果、中央線のこのあたりはもともと低い築堤であったことがわかりました。写真4~6を参照するとコンクリートブロックの擁壁になっていますが、東西線工事で掘削した後にこのようになったようです。となると、下記のように推測できます。
 (1)当初、工 マーク②まで中央線の築堤で、そのすぐ北側に細い道があった。
 (2)東西線工事に伴い、築堤はコンクリートブロック擁壁になった。
 (3)道路の幅を確保し、工 マーク①が新たな境界となった。工 マーク②は道路上に取り残された。
 (4)中央線と道路の間の空地をJRが駐車場にし、境界にポールを立てた。

 それでは東西線そのものの位置はどこで、何によって示されているのでしょうか? 実は、東西線はこの駐車場と道路(写真8)の下を走っています。地上に東西線の位置を示すものは特にありません。写真8右側(北側)に6階床の集合住宅がありますが、この建物はぎりぎり東西線にかかっていないものと思われます。

4.まとめ

 以前、東京メトロのトンネルの真上でSマークの杭を見つけたことがあったため、一時的に判断を誤ってしまったようです。地下にあるトンネルの位置を特定するのは、なかなか大変です。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】
写真1~3は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(KT657Y-C3-14、CKT20176-C24-18)を私が編集・加工したものです。