丸ノ内線分岐線はどのように分岐しているか

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1.はじめに

 「東京メトロ丸ノ内線のトンネルはどこにあるか」を連載しています。

 丸ノ内線の本線は新宿駅から荻窪駅に向かって、青梅街道の下を西に走っています。そして途中の中野坂上駅で、方南町駅に向かう「分岐線」が分岐します。この分岐線は中野新橋入口交差点で南に分岐する川島通の下を走っていくのですが、どのように川島通にもぐり込んでいくのでしょうか(写真1)。

2.分岐部付近の空中写真

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写真1 中野新橋入口付近(1963年撮影)

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写真2 中野新橋入口付近(2009年撮影)

 分岐線の中野坂上駅から中野富士見町駅まで部分開業したのは1961年2月です。写真1はその2年後に撮影された空中写真ですが、2009年(写真2)も道路はほとんど変わっていないことがわかります。もちろん、道路の下を走っている丸ノ内線の経路は変わっていません。

 さて、分岐線は中野新橋入口交差点から130mほど東で(中野坂上駅の500mほど西で)、本線から左(南)に向かって半径130mの曲線で分岐します(写真2)。丸ノ内線電車は18m長ですから、6両編成の最後尾がこの曲線に入り終わった時、先頭はすでに48度近く曲がっている計算になります。かなり急ですね。曲線を通過できる速度を考えると半径はなるべく大きくした方がよいのですが、その一方で民有地の下をなるべく通さないために(用地買収を減らすために)、急曲線になっています。電車に乗っていると、ぐいぐい曲がっていくのがよくわかります。

3.半径130m曲線上の街並み

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写真3 分岐線分岐付近

 本線から分岐線が分岐する付近を撮影したのが写真3です。建物に付した①~③は、写真2の建物①~③に対応しています。建物①の左手前(道路側)が階段状に低くなっていますが、建設史によるとこの真下に分岐線トンネルがあります。階床を減らしてトンネルに大きな荷重がかからないようにしているわけです。

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写真4 建物②脇の換気口

 隣りの建物②もトンネルの上に建っており、5階床しかありません。建物②のすぐ脇(南側)には換気口(写真4)がありました。分岐線が建物②の下を走っている証です。

 建物③を裏(南側)から撮影したのが写真5です。建物①と同様、階段状に欠取られています。この下にあるトンネルへの影響を配慮したものと考えられます。

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写真5 建物③

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写真6 分岐線の真上

 建物③(写真5)の前で体の向きを180度変えて撮影したのが写真6です。分岐線の真上は空地(駐車場)になっています。建物を建てないのはもったいないような気がしますが、トンネルの真上で基礎構造が複雑になるのを嫌っているのでしょう。空地の奥には本町変電所(赤〇印)が見えます。

4.半径130m曲線内側から見ると

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写真7 分岐線の真上(遠景)

 建物①~③の裏側(南東)に回り込んで撮影したのが写真7です。建物①の右奥側(黄〇印)と建物③の左手前側(赤〇印)が階段状に低くなっていることがよくわかります。建物②はこちら側から見ても階段状になっていませんが、もともと5階床しかありませんから、トンネルに対する荷重は許容範囲なのだろうと思われます。

5.川島通沿いの本町変電所

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写真8 本町変電所

 東京メトロの本町変電所(写真8)は、丸ノ内線の電車に電力を供給する変電所です。分岐線のトンネルは土被り2m(どかぶり:トンネル上の土の厚さが2m)しかないので、まずトンネルを敷地いっぱいに建設して、その上に変電所を建てています。建設史の図を参照すると、変電所の地下2階はトンネルと一体構造になっていることがわかります。開業から60年ほど経過していますが、建設史に掲載されている姿と現在の姿(写真8)はほとんど変わりません。

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写真9 本町変電所前の換気口

 本町変電所の前の川島通には換気口(写真9)があります。この下を丸ノ内線分岐線が右奥から手前に向かって走っています。丸ノ内線分岐線はこの先、中野新橋駅付近まで川島通の真下を進みます。

6.まとめ

 丸ノ内線分岐線は半径130mという急曲線で建物①~③の下を通り、さらに本町変電所地下と一体構造のトンネルを通って川島通の下にもぐり込んでいます。その気になって見ないと、建物上部の不自然な欠取り(階段状の構造)にも気づかないものですね。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ の
さかてつ でした…

【注記】
写真1~2は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(MKT636-C7-12、CKT20092-C65-7)を私が編集・加工したものです。