もともとこのシリーズは「地下鉄のトンネルはどこにあるか(地図に記載された通りか)」という事例を紹介していますが、今回はちょっと趣向を変えて「丸ノ内線四ツ谷駅で見られるトンネル外側(外面)のようなもの」に関する記事です。
地下鉄に限らず、トンネルの内側(内面)を見ることは容易です。トンネルを走っている列車の窓から外を見ればよいだけの話です。それに対して、トンネルの外側(外面)を見ることはなかなかできません。トンネルの外側は基本的に地山(土や岩)だからです。
ところで、丸ノ内線四ツ谷駅の北側には地下鉄トンネルのようなものが地上にあり(写真1~3)、この先半径162.716m左曲線で新宿通の下にもぐり込んでいます。もしこの地上部分が新宿通のトンネルと一体のものとして造られたのであれば、「外側(外面)を見られるトンネル」として貴重なものということになります。
航空写真(写真5)で見ると状況がよくわかると思います。黄〇印が四ツ谷駅のトンネル(のようなもの)です。
ところが、建設当時の状況を知るために建設史を調べてみてもこのようなトンネルは記載されていません。不思議に思って丸ノ内線開業直後の航空写真(写真6)を確認してみたら…なんと線路がむき出しです。建設当時はここにトンネルなどなかったのです。
トンネルと思っていた建造物は交差点への通路用デッキで、線路を壁で囲んでその上を利用した、という話のようです。残念でした。
【参考資料】
1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
P.120先「図77 西銀座・新宿間線路平面図及び縦断面図」
P.124「図82 四ツ谷駅」
P.175「図123 四ツ谷駅鳥観図」
2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)
【注記】
国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」でダウンロード可能な空中写真は、出典の明示を行なえば利用可能(申請不要)です。編集・加工等をした場合はその旨記載が必要です。写真5~6は国土地理院写真データ(CKT20176-C20-24、KT611YZ-2-186)を基に私が編集・加工したものです。