丸ノ内線は国土交通省の敷地内を走っているか?

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写真1 換気塔

 千代田区霞が関二丁目1、霞ヶ関坂に面して国土交通省があります。霞ヶ関坂を登り切った外務省上交差点からは、国土交通省敷地内に二つの換気塔(写真1)が見えます。便宜上、霞ヶ関坂のふもと側から換気塔A(写真2)、換気塔B(写真3)としますが、いずれも結構な年数を経ているようです。
 霞ヶ関坂の道路下には丸ノ内線トンネルがあります。のちに述べますが、霞ヶ関坂ふもとの霞が関一丁目交差点で道路が食い違っています。ということは、丸ノ内線国土交通省の敷地内を走っているのではないでしょうか…。そして、これらの換気塔(写真1~3)は丸ノ内線のものではないでしょうか…。現実はどうなのか、調べてみました。

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写真2 換気塔A

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写真3 換気塔B

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写真4 霞ヶ関坂周辺(1963年)

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写真5 霞ヶ関坂周辺(1984年)

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写真6 霞ヶ関坂周辺(2009年)

 写真4~6は霞ヶ関坂付近の航空写真です。国土地理院写真データ(MTK636-C9-19、CKT843-C12-30、CKT20092-C58-19)を基に私が編集・加工したものです。これらの写真中央を左右方向(東西)に走っているのが霞ヶ関坂で、霞ヶ関坂の右下(東側)が霞が関一丁目交差点です。この交差点、完全な+字形ではなく若干上下(南北)に食い違っていることがわかります。
 丸ノ内線日比谷公園西側の霞ヶ関駅を出ると、国会議事堂駅に向かって霞ヶ関坂の下を走ります。日比谷公園は江戸時代に日比谷入江、すなわち海でした。一方、国会議事堂は丘陵の上です。この二つの場所を結ぶのが霞ヶ関坂で、丸ノ内線の線路は35‰登り勾配となっています。この勾配を登り切るあたりは国土交通省の敷地になります。
 丸ノ内線は上記の通り日比谷公園方面から走ってくるわけですが、途中の霞が関一丁目交差点をそのまま直進すれば、その食い違いを維持したまま霞ヶ関坂を登って国土交通省の敷地内に食い込むのではないでしょうか…。となると、敷地内の換気塔(写真1~3)は丸ノ内線のものではないでしょうか…。

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写真7 霞が関一丁目交差点

 霞ヶ関坂を霞が関一丁目交差点(写真7)から見ると、上記の食い違いがよくわかります。ちなみに、手前(東)に見えるのはNo.87換気口、道路の向こうに見えるのは霞ヶ関駅A3a,3b出口(写真8)です。

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写真8 霞ヶ関駅A3a,3b出口

 霞ヶ関坂のふもとで霞ヶ関駅A3a,3b出口付近からと霞が関一丁目交差点方面を振り返って見ても食い違いがよくわかります(写真8)。ここから先、国会議事堂駅に向かって登っていくことになります。建設史(参考資料1)P.120先「図77 西銀座・新宿間線路平面図及び縦断面図」には土被り高が記載されていますが、このあたりは土被り6m程度でほぼ一定です。地面が坂道(霞ヶ関坂)になっているので、その下を走っている丸ノ内線も登り勾配になっているわけです。

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写真9 No.89換気口

 霞ヶ関坂には丸ノ内線の換気口が3つあります。ひとつ目は霞ヶ関駅A3a,3b出口(写真8)と一体のNo.88換気口、二つ目は霞ヶ関坂中央(写真4~6中央)付近すなわち総務省消防庁と国道交通省の間付近にあるNo.89換気口(写真9)、三つ目は霞ヶ関坂を登り切った外務省上交差点にあるNo.90換気口(写真10)です。このNo.90換気口付近から国土交通省敷地内を見た状態が写真1です。

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写真10 No.90換気口

 これら3つの換気口はいずれも霞ヶ関坂の北側歩道上にあり、建設史(参考資料1)P.120先「図77 西銀座・新宿間線路平面図及び縦断面図」にはそれぞれ「89」「90」「91」と記載されています。お気付きの通り一つずつ番号がずれていますが、これは建設史記載の日比谷公園内No.82およびNo.83換気口が、現実にはNo.82(-1と-2の一体形)として完成しているためです。したがって、建設史と現地の換気口No.対応は下記のようになります。

 建設史:82→83→84…89→90→91…
 現地 :82一体→83…88→89→90…

 ところで、建設史の図77には丸ノ内線線路の曲線半径も記載されています。霞ヶ関駅を出るとすぐに半径500m左曲線です。この500m曲線は霞ヶ関駅A3a,3b出口のNo.88換気口付近(写真8)で終わり、60~70m直進したあと800m右曲線に変わります。
 800m右曲線が終わる地点は、No.89換気口(写真9)とNo.90換気口(写真10)中間付近です。霞が関一丁目交差点で道路は食い違っていましたが、S字曲線によりその食い違いを吸収し、このあたりで丸ノ内線は再び道路(霞ヶ関坂)の真下にもぐり込んでいることになります。さらに、建設史と現地の換気口No.とその位置の対応関係を調べてみましたが、換気塔(写真1~3)は登場しません。

 …ということになると、冒頭の「丸ノ内線国土交通省の敷地内を走っているか?」に関しては「敷地内を走っていないと同時に、換気塔(写真1~3)も丸ノ内線のものではない」となりますね。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)

【注記】
 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」でダウンロード可能な空中写真は、出典の明示を行なえば利用可能(申請不要)であり、編集・加工等をした場合はその旨記載が必要です。上記の通り、写真4~6は国土地理院写真データ(MTK636-C9-19、CKT843-C12-30、CKT20092-C58-19)を基に私が編集・加工したものです。