丸ノ内線山下橋付近

 丸ノ内線は泰明小学校の裏を通り、山下橋架道橋でJR線と交差し、東京宝塚劇場と帝国ホテルの間の道を西に日比谷公園に向かいます。毎度のことながら地図により経路がばらついているので、本当の経路がどこなのか調べてみました。

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写真1 山下橋架道橋

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写真2 東京高速道路(銀座ファイブ)

 このあたりの外濠川は千代田区(西側)と中央区(東側)の区境になっています。半世紀ほど前の地図を参照すると山下橋が記載されています。外濠川のすぐ脇には国鉄線(現在のJR線)が走っており、山下橋を通る道路と山下橋架道橋(写真1)で交差しています。この道路を西(写真1左側)へ進むと日比谷公園に出ます。
 外濠川はその後埋め立てられて東京高速道路になり、銀座ファイブが入っています(写真2)。写真2の右端に泰明小学校がちらりと写っていますが、丸ノ内線はこの裏から東京高速道路(銀座ファイブ)とJR線をくぐり、写真1の道路の延長線上にもぐり込んでいます。
 参考資料1のP.120先「図77 西銀座・新宿間線路平面図及び縦断面図」によると、このあたりで丸ノ内線は半径162.716m右曲線となっています。同資料P.108「図71 泰明小学校裏の高速道路との交差部一般図」を参照すると、東京高速道路と一体構造の丸ノ内線トンネル構造が良くわかります。

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写真3 列車線・新幹線との交差部

 現在、山下橋架道橋付近では耐震補強工事を実施しています。工事現場の柵が開いていた某日、その隙間からその状況を撮影しました(写真3)。ここは高架下の飲食街(写真4)でしたが、工事に伴い店舗が無くなり架道橋が裸になっています。工事期間は約1年間とのことですから、このような状況を見られるのは今のうちということになります。地下鉄の経路に興味を持った時期にこのような工事が実施されているとは、実に幸運です。

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写真4 高架下(2015年撮影)

 写真3正面に見えるのは東海道新幹線の架道橋です。丸ノ内線はここを右奥から左手前に走っています。新幹線工事着工は丸ノ内線開業後ですから、素直に鋼製橋梁で丸ノ内線トンネルを跨いでいます。
 写真3の左側には東海道線(列車線)の鉄筋コンクリート造りラーメン高架橋が見えます。参考資料1のP.130「図87 第一有楽町橋付近平面図」、P.133「図90 列車線部分C-C断面図」、参考資料2のP.68「山下橋付近国鉄高架下横断 東海道本線部」を参照すると、山下橋架道橋から1~3本目の橋脚が受桁(梁の厚さ2.5mの鉄筋コンクリート製)に支えられていることが良くわかります。工事は下記のように実施されています。
 (1)2本のケーソン基礎を沈設し、2本ずつ計4本の柱を立てる
 (2)高架橋のラーメン橋脚6本を取巻くように受桁構築
 (3)受桁下部に突出しているラーメン脚柱切断、基礎撤去
 (4)丸ノ内線トンネルを構築

 橋脚受桁は地中にあるため、地表に突出部はありません(写真3左)。ただし土被りは1mも無いようですから、耐震補強工事の状況によっては橋脚受桁の上面を観察できることがあるかもしれません。

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写真5 すしざんまい(電車線との交差部)

 山下橋架道橋西側(日比谷公園側)は京浜東北線・山手線(電車線)で、その下にはすしざんまい有楽町店があります。そして、このお店の真下には丸ノ内線トンネルがあります。
 参考資料1のP.130「図87 第一有楽町橋付近平面図」、P.131「図88 電車線部分A-A断面図」と「図89 電車線部分B-B断面図」、参考資料2のP.68「山下橋付近国鉄高架下横断 電車線部」を参照すると、既設の煉瓦アーチを1径間分取り壊してコンクリート桁橋梁としていることがわかります。この新設コンクリート橋梁の橋脚と山下架道橋の橋脚(歩道の脇)は、地下に構築された橋脚受桁の上に載っています。もちろん、すしざんまいもこの受桁の上です。

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写真6 すしざんまい(高架橋改築状況)

 上記のようなことを頭に入れてすしざんまいをよく見ると、丸ノ内線を地下に通すに際してどのような改築を行なったかが良くわかります(写真6)。
 (1)店舗上部のアーチは単なる飾り板
 (2)アーチ要石相当する部分は橋脚頭部
 (3)残存煉瓦アーチ端部は橋台に改造

 アーチを1径間取り壊したため「第1有楽町橋高架橋」という表示板は山下橋架道橋から1径間分ずれたところに取付けられています。

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写真7 第1有楽町橋高架橋

 すしざんまいから北側に20mほどの地点から第1有楽町橋高架橋を見るとこのような感じ(写真7)です。なかなか素敵な意匠の高架橋だったことがわかります。

 何気なく歩いていると気づきませんが、いろいろ調べると丸ノ内線トンネルの存在を示す証拠はあるものです。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)
 3.人文社編「古地図・現代図で歩く 昭和三十年代東京散歩」人文社(2004年)
 4.竹内正浩「空から見る戦後の東京」実業之日本社(2014年)