丸ノ内線は泰明小学校の下を走っているか

f:id:me38a:20190830202149j:plain

写真1 泰明小学校

 晴海通の南西側、銀座五丁目に泰明小学校があります。各種の地図を参照すると、丸ノ内線が泰明小学校の裏を走っていたり下を走ったりしています。いったいどの経路が正しいのでしょうか?
 参考資料1のP.69「図45 西銀座駅」を参照すると、丸ノ内線A線は晴海通と交差したあとマツダビルの前をかすめて数寄屋橋公園の下にもぐり込んでいるように記載されています。マツダビルがあった場所には現在東急プラザ銀座が建っています。ところでこの場所、私の記憶では数寄屋橋阪急だったように思ったので調べてみたところ、マツダビルに阪急百貨店が入っていたことがわかりました。その後ビルの名称変更、所有者の変更等々あったようですが、5年ほど前からビルの建替えが始まり、2016年に東急プラザ銀座が開業しました。

f:id:me38a:20190830202221j:plain

写真2 数寄屋通(2014年撮影)

 マツダビルを東急プラザ銀座に建替えている最中の風景が写真2です。写真左側(東側)には現在東急プラザ銀座が建っています。写真右側(西側)は数寄屋橋公園ですが、歩道に換気口があります(赤↓印のあたり)。この数寄屋橋公園は東急プラザ銀座完成と前後して整備されました。写真2右側に写っている岡本太郎作「若い時計台」は写真奥の方に移動しています。
 このようにまわりの状況はいろいろ変わっていますが、赤↓印の換気口位置は変わっていません。この換気口を数寄屋橋公園から見た状態が写真3です。

f:id:me38a:20190830202237j:plain

写真3 換気口(2019年撮影)

 参考資料1のP.69「図45 西銀座駅」によれば、この換気口(写真3)の左側(西側)から東京高速道路までの範囲が銀座駅です。ちょうど今、エレベーター新設工事中ですが(写真4)、工事しているところがまさに銀座駅です。

f:id:me38a:20190830202259j:plain

写真4 エレベーター新設工事風景

 さて、冒頭の「丸ノ内線は泰明小学校の下を走っているか」ということに関してですが、写真4を見ればその答がわかります。同写真の左側(東側)に見えるのが泰明小学校、右側(西側)に見えるのが東京高速道路(銀座ファイブ)です。丸ノ内線は両者の間を走っており、泰明小学校の下は走っていません。

f:id:me38a:20190830202315j:plain

写真5 銀座駅C1出口

 エレベーター新設工事(写真4)の地下は写真5のようになっています。同写真は丸ノ内線銀座駅の改札口前で撮影したものですが、奥(西側)に見えるのが東京高速道路(銀座ファイブ)の地下1階です。銀座駅東京高速道路にぴったりくっついていることが良くわかります。

f:id:me38a:20190830202329j:plain

写真6 銀座駅換気塔

 エレベーター新設工事場所の塀をぐるりと回りこむと通路の脇に換気塔(写真6)があります。これは丸ノ内線銀座駅霞ヶ関寄換気室のもので、参考資料1のP.69「図45 西銀座駅」とP.293「図8 西銀座駅換気機配置図」いずれにも記載があります。この換気塔のあるところが銀座駅の東側ですから、丸ノ内線トンネルの幅がわかります。いずれにしても丸ノ内線は泰明小学校の下を走っていないのです。ちなみに丸ノ内線トンネルの土被りはこの付近で2m程度です。

f:id:me38a:20190830202345j:plain

写真7 東京高速道路(銀座ファイブ)

 上記の通り、丸ノ内線は泰明小学校の裏と東京高速道路の間を走っています(写真7)。ところで、丸ノ内線トンネルは昔外濠川だったのか地面だったのか気になって、参考資料4で調べてみました。
 参考資料4の1948年(昭和23年)の航空写真を見ると、泰明小学校の裏はすぐに外濠川になっています。1975年(昭和50年)の航空写真と見比べると、東京高速道路は外濠川の幅をすべて使っているわけではなく、このあたりでは幅の4割程度を使っているにすぎません。外濠川の幅は思っていた以上に広かったようです。外濠川の幅の残り6割は、丸ノ内線トンネル用地(中央区側)と道路用地(千代田区側)として使われています。写真7において私が立っているところ(丸ノ内線トンネルの真上)は昔外濠川だったということがわかりました。

 調べてみると、江戸城のお濠があったからこそ地下鉄と高速道路を並べて建設できたわけですし、泰明小学校の下に丸ノ内線を通さずに済んだわけです。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)
 3.人文社編「古地図・現代図で歩く 昭和三十年代東京散歩」人文社(2004年)
 4.竹内正浩「空から見る戦後の東京」実業之日本社(2014年)