丸ノ内線は東京国際フォーラムの下を走っているか

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写真1 東京国際フォーラム

 ネット上の各種地図はもちろん、国土地理院の地形図においても市販の紙地図にしても、丸ノ内線東京国際フォーラムの建物の脇をかすめているだけで、下は走っていないことになっています。ちなみに、参考資料1のP.66先「図41 御茶ノ水・西銀座間線路平面図及び縦断面図」、参考資料2のP.54~55「丸ノ内線御茶ノ水-東京間線路図」に東京国際フォーラムは記載されていません。東京駅-西銀座駅(現在の銀座駅)間開業は1957年、東京国際フォーラム竣工は1996年ですから、当たり前の話です。とにかく丸ノ内線の経路をはっきりと確認できないまま、何となく地図を信じて「丸ノ内線東京国際フォーラムの建物の脇をかすめているだけで、下は走っていない」と思っていました。
 ところがある日、東京国際フォーラムガラス棟の前で換気口(写真1赤↓印)を発見してしまいました。しばらく待っていると、地下から丸ノ内線の音(第三軌条の切れ目を集電靴が通過する音)が聞こえるとともに、独特のにおいが漂ってきました。やはり、この換気口は丸ノ内線のものなのです。

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写真2 都道407号丸の内室町線

 上記の丸ノ内線換気口から北側(東京駅側)を見たのが写真2です。奥からまっすぐ手前に続いている道路は都道407号丸の内室町線で、この真下を東京駅からこちらに向かって丸ノ内線が走っています。仮に丸ノ内線トンネルの位置が換気口に対してめいっぱい東側(写真1左側)に寄っているとしても、トンネルは東京国際フォーラム会議棟の下にもぐり込んでいるように思われました。
 丸ノ内線トンネルと東京国際フォーラム会議棟との位置関係を明確にしようと思い参考資料1のP.92「図61 第四有楽町橋付近平面図」も参照しました。しかし、建設当時の丸ノ内線トンネルこそ記載されていますが、現在東京国際フォーラムが建っている場所には東京都庁が記載されています。やはりこれでは東京国際フォーラム丸ノ内線トンネルとの位置関係がはっきりしません。

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写真3 地下1階案内図

 その後も、会議棟の下を丸ノ内線が走っているという証拠(報告書)はないだろうかとずっと気になって探し続けていましたが、ある日とうとう参考資料3を見つけました。これは東京国際フォーラムの地下構造、地上構造、地下工事、地上大屋根工事などに関してまとめてある報告書で、「東京国際フォーラムの地下構造はガラス棟(東側)とホール棟(西側)が一体になった地下3階分の鉄筋コンクリート造であり、東西南北すべてを鉄道構造体に囲まれている」という内容が記されています。特に目を引いたのが「図-1 地下1階平面図」です。JR京葉線、JR横須賀線、地下鉄有楽町線東京国際フォーラムの敷地外(道路の下)ですが、地下鉄丸ノ内線だけは敷地内に完全に入り込んでいることがはっきりわかります。

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写真4 1階案内図

 この参考資料3を読んだあと、再度現地へ出向きました。屋外に設置されている地下1階案内図(写真3)を見ると、丸ノ内線の走っているところ(写真上方、会議棟東側)が欠き取られていることに気づきました。これに対して1階案内図(写真4)は写真上方(会議棟東側)に欠き取りはなく、なめらかな曲線を描いています。やはり、丸ノ内線東京国際フォーラムの敷地内地下を走っているのです。

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写真5 地下1階

 東京国際フォーラムの会議棟脇(ガラスホール)地下1階(写真5)には地上への階段・エスカレータがありますが、地下1階案内図(写真3)記載通り、これより東側には入れません。この壁の向こうは丸ノ内線ということのようです。
 ここで疑問に思ったのが、「会議棟はガラス棟全体の重量を支えているのではないか? 会議棟を介して丸ノ内線トンネルにそんなに大きな荷重がかかっても大丈夫なのか?」ということでした。しかし参考資料3をよく読むと、その疑問も解けました。

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写真6 ガラス棟内部

 ガラス棟のガラスホール屋根は大柱(写真6中央)2本で支えられているのです。会議棟により屋根の重量が支えられているわけではありません。大柱2本の根元は敷地いっぱいに広がる地下構造に支えられているため、屋根の重量約3,000トンは丸ノ内線トンネルにかからないのです。なるほど、うまい具合に設計・施工されているんですね。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)
 3.阿部智「東京国際フォーラムガラス棟の建設」コンクリート工学34巻4号(1996年)