丸ノ内線 順天堂付近の曲がり具合

 丸ノ内線A線の電車は本郷三丁目駅を出ると南に向かって走りますが、順天堂大学付近で進行方向を東に変え、御茶ノ水駅に向かいます。ところが、この経路が地図によって下記(1)~(4)のごとく異なっています。

 (1)国土地理院1万分の1地形図:外堀通から神田川の縁まで大きくはみ出す
 (2)昭文社らくかるマップル :上記(1)と同様
 (3)Googleマップ      :上記(1)と同様
 (4)Yahoo!地図       :ほぼ外堀通の範囲内に収まる

 もう少し追記すると、(1)~(3)は御茶ノ水駅プラットホーム部が外堀通の地下に一直線に収まっているのに対し、(4)は御茶ノ水駅プラットホームの本郷三丁目駅寄りが東京医科歯科大学(順天堂大学の東隣)の敷地に入り込むように曲がっています。さて、正しい経路はどうなっているのでしょうか?

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写真1 順天堂前交差点(外堀通より)

 順天堂大学は、外堀通の北側に面して東西にその建物が並んでいます。順天堂前交差点においては東西に並ぶ建物の間に道路があり、この道路を跨ぐように連絡通路が設けられています(写真1)。この連絡通路は一般の歩道橋も兼ねており、そこから順天堂前交差点全体を見下ろすことができます(写真2)。

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写真2 順天堂前交差点(連絡通路より)

 丸ノ内線の経路に関しては、参考資料1のP.18先「図11 池袋・御茶ノ水間線路平面図及び縦断面図」、参考資料2のP.38~39「池袋-御茶ノ水間線路平面圖及縦断面圖」に掲載されています。これによると、本郷三丁目駅方面から南下してきた丸ノ内線は順天堂前交差点を半径180m左曲線で一気に曲がって外堀通の下にもぐり込んでいます。

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写真3 換気口(順天堂交差点付近)

 外堀通のすぐ南側は神田川です。外堀通の南側(神田川側)歩道を歩いてみると、神田川法面上部に換気口がありました(写真3)。すなわち、この区間神田川法面に丸ノ内線トンネルはこれ以上はみ出していません。丸ノ内線は外堀通の南側(神田川側)ぎりぎりのところを走っていることがわかります。半径180mということを考えると、丸ノ内線トンネルの一部は順天堂大学の公開空地(写真2左側および写真3右奥)の下を通っているものと思われます。

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写真4 換気口(M&Dタワー前)

 外堀通南側(神田川側)の歩道をさらに御茶ノ水駅方向に向かって歩いてみましたが、もう換気口は見つかりませんでした。一方、北側(東京医科歯科大学側)の歩道を歩くと、東京医科歯科大学のM&Dタワー(医歯学総合研究Ⅱ期棟)正面付近に換気口がありました(写真4)。外堀通はこのあたりで100mほどの区間に限り、その両側区間に対して30度ほど南を向いていますが、この屈曲をうまく利用して上記の半径180m左曲線に続けて半径500m左曲線で御茶ノ水駅に入り込んでいます。写真4はちょうどこの半径変化点付近になります。

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写真5 換気口(お茶の水門付近)

 外堀通北側(東京医科歯科大学側)の歩道をさらに歩くと、東京医科歯科大学お茶の水門近くにも換気口がありました(写真5)。参考資料1のP.22「図17 御茶ノ水駅」と照合すると、ここは御茶ノ水駅プラットホームの本郷三丁目駅寄り先端の少し西になります。なお、御茶ノ水駅全体は径500mで曲がっており、プラットホームの本郷三丁目駅寄りは東京医科歯科大学の敷地内に大きく食い込んでいます。参考資料1図17、現地状況、Googleマップ航空写真より、この換気口はA線ではなくB線側のものであろうと思われます。
 現地を歩いてみると、この制約だらけの状況において実にうまい具合に経路を設定してあるものだと感心させられます。

 さて、冒頭の地図表記に戻ります。今回の調査結果より(1)~(3)はいずれも正しくなく、(4)が「比較的」正しい経路に近いということになります。ただしうるさいことを申すと、上記(4)においても御茶ノ水駅西方に直線区間が入ったりしていますので、今ひとつという感じです。

×(1)国土地理院1万分の1地形図:外堀通から神田川の縁まで大きくはみ出す
×(2)昭文社らくかるマップル :上記(1)と同様
×(3)Googleマップ      :上記(1)と同様
△(4)Yahoo!地図       :ほぼ外堀通の範囲内に収まる

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)