丸ノ内線は安藤坂とどこで交差するか

 丸ノ内線A線の電車は茗荷谷駅を出るとしばらく地上(谷間)を走りますが、そのうち丘にぶつかり、長さ400m程度のトンネルに入ります。丘の上には伝通院から下ってくる安藤坂があり、丸ノ内線はこれと交差して後楽園駅に至ります。今回はこの区間のトンネル真上に何があるかというお話です。また毎度のことながら、地図によって経路の記載が異なっています。この区間に限っての話ですが、国土地理院の地形図、Googleマップが正しく、Yahoo!地図は正しくありません。

f:id:me38a:20190814175246j:plain

写真1 池袋側トンネル坑口

 参考資料1のP.18先「図11 池袋・御茶ノ水間線路平面図及び縦断面図」、参考資料2のP.38~39「池袋-御茶ノ水間線路平面圖及縦断面圖」によると、トンネルに入るまで半径800m左曲線になっています。トンネル脇の擁壁の上には茶色の集合住宅が建っていますが、丸ノ内線線路の形状に合わせて壁面が階段状になっていることがわかります(写真1)。橋の上から眺めていると、02系が緩やかに左に曲がりながらトンネルに吸い込まれていきました。

f:id:me38a:20190814175306j:plain

写真2 トンネル坑口上

 池袋側トンネル坑口上の状況を確認するため、ぐるりと遠回りして安藤坂に出ました。安藤坂は伝通院から神田川の谷に向かって南に下る坂道です。この安藤坂の途中からトンネル坑口上が写真2のように見えます。奥に見える濃いベージュ色の集合集宅は、写真1右奥に見えていた建物の裏側です。写真2において濃いベージュ色の集合住宅の手前には、緑帯が入った白い集合住宅が見えます。さらにその手前には樹木が並んでいますが、丸ノ内線A線はこの下を右奥から左手前に向かって走っています。

 

f:id:me38a:20190814175326j:plain

写真3 安藤坂

 写真2を撮影したあとで安藤坂を下りました。坂の下の方から東に向かって、牛天神北野神社の参道が分岐していますが、この少し上で撮影したのが写真3です。坂道の両側には集合住宅が建ち並んでいます。ここまで下りてくる途中すなわちこの写真に写っている範囲で、私は丸ノ内線を跨いだはずです。しかしすぐにはわかりませんでした。

f:id:me38a:20190814175353j:plain

写真4 集合住宅の隙間

 地図と現地の状況を照合しながら再度ゆっくりと坂道を上っていくと、高層集合住宅の間にぼっかりと空間があるのを見つけました(写真4)。左側に見える建物は、写真1いちばん奥に見える建物と同一です。改めて地図と照合すると、まさにこの真下が丸ノ内線のトンネルということがわかりました。丸ノ内線A線の電車はトンネル(写真1)に入るとほどなく半径1000m右曲線になり、このあたりまで緩やかなS字曲線を描きながら手前に向かって走ってきます。高層集合住宅の間に低層の集合住宅が見えますが、トンネルに対する荷重を制限するため低層になっているのでしょう。
 安藤坂は今まで何回も通っていますが、このようになっていることを今回初めて認識しました。そうと知らないと何も見えない(気づかない)ものです。

f:id:me38a:20190814175454j:plain

写真5 安藤坂東側の集合住宅

 写真4の反対側つまり安藤坂の東側を見ると、茶色の集合住宅(写真5)がありました。左側(北側)の灰色の集合住宅との間は茶色の集合住宅附属の駐車場となっており、その真下を丸ノ内線A線の電車は手前から奥に向かって走っています。ふたつの建物の間の空間は複線トンネルを通すにしてはちょっと狭いように感じましたが、灰色の集合住宅の壁面をよく見るとオーバーハングしていることに気づきました。基礎は階段のあたりまでしかないのです。これなら複線トンネルをぎりぎり通すことができそうです。
 なお、茶色の集合住宅の奥の方は丸ノ内線トンネルの真上になります。トンネルを跨ぐように特殊な基礎構造になっているものと思われます。この建物に関して文献を検索してみましたが、残念ながら見つかりませんでした。

f:id:me38a:20190814175519j:plain

写真6 牛坂上付近

 牛天神北神社の脇は牛坂と称しますが、その坂道を上りきったところで丸ノ内線A線が走ってくる方向を見ました(写真6)。ここは文京区立第三中学校の校庭の一部でプールがあります。校庭越しに写真5の茶色の集合住宅が見えます。私の真下を丸ノ内線が走っています。

 

f:id:me38a:20190814175534j:plain

写真7 牛坂上付近

 写真7は、写真6と同一地点で体の向きを180度変えて撮影した風景です。こちら側には筑波大学附属大塚特別支援学校があります。Googleマップ航空写真を見ると写真7の建物が写っていますが、丸ノ内線トンネルを避けるように壁面が欠き取られていることがわかります。このあたりから丸ノ内線は半径250m左曲線になります。

f:id:me38a:20190814175550j:plain

写真8 特別支援学校の校庭

 小石川税務署の西側にはジャパンビバレッジの建物がありましたが、近年解体されて巨大な空地になっています(写真8)。そのため、筑波大学附属大塚特別支援学校の校庭がデッキ状に丸ノ内線トンネルを越えて突出している状況がわかるようになりました。右側に見えるのは東京国税局小石川寮ですが、これもそのうち解体されそうな雰囲気です。解体されれば丸ノ内線トンネルの状況がさらによくわかると思われます。

f:id:me38a:20190814175609j:plain

写真9 銀座側トンネル坑口付近

 小石川税務署および東京国税局小石川寮の奥(北側)に、丸ノ内線トンネルが見えます(写真9)。この範囲、正しくは覆いであり、丸ノ内線電車の車内から見るとトンネルとの構造の違いがよくわかります。わざわざ覆いを設けたのは、近隣に対する騒音抑制のためだと思われます。この先丸ノ内線は地上を走行して後楽園駅に至ります。地上区間に関して地図による経路相違はありません。
 ところで今回の区間ですが、A線方向に「半径800m左曲線→半径1000m右曲線→半径250m左曲線」と大きくうねっています。トンネルの位置を20~30m南にすれば「直線→半径500m程度の左曲線」と素直な経路になり、半径250m急曲線をなくすことで騒音防止および速度向上が図れたように思われます。しかし地図をよく見ると、牛天神北野神社の真下を通過することになってしまいます。さすがに神様の真下を通すわけにはいかないということだったのでしょう。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)