日比谷線はどこを走っているか(その6) 渋谷橋付近

渋谷橋といっても渋谷駅の近くではなく、恵比寿駅の近くの渋谷川にかかる橋です。橋の近くには渋谷橋交差点があります。日比谷線建設史P.254先の平面図および縦断面図、P.429図107渋谷川河底横断施工図によると、明治通りを西に走ってきた日比谷線の電車は半径350m左曲線で明治通りから外れて渋谷川と斜めに交差しますが、渋谷橋の下は通っていません。渋谷川を越えたところで半径163m左曲線になり、駒沢通りの下にもぐり込んで恵比寿駅に向かいます。

当初私は、交差点における建物の並びの丸み(写真4参照)こそ日比谷線トンネルの曲がり具合そのものだと考えていました。つまり、これらの建物の「前」を日比谷線は走っていると思っていたのです。しかし、家に帰ってきて建設史P.429図107渋谷川河底横断施工図をよく見ているうちに私自身の誤りに気づきました。日比谷線は写真4の薄茶色の建物(ルモン広尾)の「下」を走っているはずだ…と考えを改め、状況確認やり直しのため再度現地に出向きました。

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写真1 日比谷線が民有地にもぐり込み始めるあたり

渋谷橋交差点から100mほど東に離れた場所(明治通り)です。中央に古い2階建ての木造店舗が見えますが、位置的に見てぎりぎりのところで日比谷線トンネルには干渉していないのではないかと思われます。

 

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写真2 日比谷線が民有地にもぐり込み始めるあたり

写真1の木造2階建ての西隣りの状況です。14階床の集合住宅(クリーム色)が道路から5~6mほど引っ込んだ形で建てられており、その前に写真2に示したような建造物(ゴミ捨て場?)があります。日比谷線は、私の足元からこの建造物の下に入り込んでいるものと推定されます。写真2の奥には水色の網が壁面にかけられている建物が見えますが、この建物は4階床しかありません。この程度の階床なら日比谷線トンネルの真上に建設することは可能です。

 

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写真3 日比谷線上の建物

渋谷橋交差点の歩道橋から撮影した風景です。写真3の中央は14階床の集合住宅(クリーム色)ですが、その右手前には4~5階床の低い建物しかありません。建設史P.429図107渋谷川河底横断施工図と対比すると、これらの低い建物の下を日比谷線が走っていることになります。

 

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写真4 日比谷線上の建物

写真4中央の薄茶色の建物はルモン広尾と称する集合住宅ですが、建設史P.429図107渋谷川河底横断施工図と対比すると、この建物の奥(渋谷川側)の真下を日比谷線が走っていることがわかります。

 

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写真5 渋谷橋越しに見る日比谷線上の建物

渋谷橋交差点を恵比寿駅に向かって入ったところから、渋谷橋越しに撮影した風景です。中央に見える薄茶色の建物(ルモン広尾)の右半分が日比谷線の真上になります。奥に14階床の集合住宅(クリーム色)が見えますが、この建物は前述の通り日比谷線トンネルとは干渉していません。

 

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写真6 換気口

写真5の中央(渋谷橋の脇)に茂みが写っていますが、近くに寄って見てみるとこんなものがありました。換気口です。位置と構造から、日比谷線のものと思われます。

 

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写真7 日比谷線上の建物

換気口がある茂みの脇には3階床しかない低い建物があります。ここはまさに日比谷線の真上です。

 

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写真8 日比谷線構築物河底通過標識(広尾側)

写真7の建物の下を見ると…渋谷川の護岸にどこかで見たような標識(黄色↑部)があります。以前、茅場橋で日本橋川の護岸に取付けられているものを見かけましたが、それと同様のものです。
   ↓

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写真9 渋谷橋

写真8と同一地点から反対側(恵比寿駅側)を見たところです。日比谷線は左手前から奥に向かって走っています。渋谷橋を渡ってすぐのところは一等地であるにもかかわらず駐輪場になっていますが、これは日比谷線の真上で高い建物を建てにくいからでしょう。

この駐輪場の手前、渋谷川の恵比寿側護岸をよく見ると、広尾側と同様に標識(黄色↓部)がありました。

 

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写真10 日比谷線構築物河底通過標識(恵比寿側)

近くに寄って撮影しました。草に隠れてよくわかりませんが、「中心位置↓」等の文字が読めます。

 

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写真11 日比谷線上の風景

駒沢通りの渋谷橋南詰風景です。日比谷線は、右奥から手前に向かって走っていますが、渋谷橋の下は走っておらず、私の足元付近で駒沢通りの下にもぐり込みます。

写真右端に見える建物は9階床ですが、道路側がオーバーハングしています。建設史P.429図107渋谷川河底横断施工図と照合すると、この建物の敷地には日比谷線トンネルが少し食い込んでいることがわかります。オーバーハングしてトンネルを逃げているようです。

写真左手前、手押し台車が置かれているところは日比谷線トンネルの換気口です。

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今回はたかだか200m程度の区間でしたが、確認に意外と時間を要しました。

参考資料
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道日比谷線建設史」帝都高速度交通営団(昭和44年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)