半蔵門線はどこを走っているか(その5) 人形町交差点付近

人形町交差点の下には人形町駅があり、日比谷線浅草線が交差しています。半蔵門線はそのすぐそばを半径304mで曲がりながら走っていますが、人形町駅を経由しないまま水天宮前駅に至ります。

このあたりの状況に関しては、建設史の下記ページに記載されています。

P.525図126と図127 アンダーピニング工区平面図と縦断面図:
 小舟町交差点付近に小舟町立坑があり、その近くで浅草線と交差しています。その後半径304m右曲線で民有地の下を直角に曲がりますが、途中にある共同施設ビル(8階)、日土地ビル(9階)、ナンヤビル(8階)に関して、アンダーピニング工事を実施しています。また、ナンヤビルの脇には換気塔・換気室があることがわかります。

P.526図128 日土地ビル下受断面図:
 シールドトンネルを跨ぐように新設基礎杭と下受用梁(厚さ3m)を構築し、トンネルと干渉する基礎杭を撤去しています。半蔵門線は建物の端を通過しているため、下受用梁は道路の下にまで(敷地外に)はみ出しています。

P.526図129 共同施設ビル下受断面図:
 このビルの場合は基礎杭が比較的短く(18.3m)、シールドトンネルと干渉するわけではありませんが、荷重制限を超過するということなのでしょう。新設基礎杭と下受用梁(厚さ3.5m)でトンネルを跨いでいます。

P.528図130 ナンヤビルアンダーピニング施工順序図:
 このビルに関しては新たな基礎杭を設け、シールドトンネルと干渉しないようにしてあります。興味深いのは、ナンヤビルの隣(人形町駅寄)の地中に中間換気室が設けられていることです。下受用梁、中間換気室、いずれも歩道の下まで(敷地外に)張り出しています。

P.531図134と図135 人形町工区平面図と縦断面図:
 図126および図127と同一区間の図ですが、こちらの方が縮尺が大きくなっています。

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写真1 小舟町立坑付近の出入口

三越前駅方面から東に歩くと小舟町交差点に出ますが、そこにあるのが写真1に示した出入口です。左前方(北東側)の車道真下には小舟町立坑がありますが、出入口はこの立坑につながっているようです。中を見学してみたいものです。

 

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写真2 小舟町立坑付近の出入口(送水口)

写真1の出入口脇には、ずい道内消防用の送水口があります。帝都高速度交通営団のマークが懐かしいですね。

 

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写真3 AIC共同ビル人形町

半蔵門線は、このあたりから右に曲がり始め、正面に見えるAIC共同ビル人形町(建設史に記載されている共同施設ビル:1967年竣工)の下にゆるく斜めにもぐり込んでいきます。そうと知らなければ、真下を地下鉄が走っていることはわかりません。

 

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写真4 ガラ・ステージ日本橋人形町

写真3にも写っていますが、AIC共同ビル人形町と一方通行の道を挟んで向かい合って建っているビルです。半蔵門線は、写真右手前から奥に向かって走っています。

 

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写真5 ガラ・ステージ日本橋人形町と内山ビル

写真4を拡大した状態になりますが、こうして見ると両建物ともかなり変わった構造であることがわかります。ガラ・ステージ日本橋人形町(左側の灰色っぽい建物)は、高層部(左)と低層部(右)に分割されています。内山ビル(茶色い建物)も同様に低層部(左手前)と中層部(右奥)に分割されています。位置的に、両建物の低層部の真下に半蔵門線のシールドトンネルがあると考えられます。

 

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写真6 半蔵門線の真上

この写真の奥から左手前に向かって半蔵門線が走っています。奥には、写真5に示した内山ビル(茶色い建物)の中層部とガラ・ステージ日本橋人形町の高層部が見えます。これらの建物の間がトンネルの真上ということになります。

 

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写真7 半蔵門線の真上

写真6と同一地点でほぼ180度向きを変えて撮影した写真です。左手前から奥に向かって半蔵門線が走っています。

 

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写真8 半蔵門線の真上付近

この写真の右奥の真下を半蔵門線が走っています。奥に見える白いビルは、建設史に記載されている日土地人形町ビル(1972年竣工)です。

 

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写真9 日土地人形町ビル北側

半蔵門線は、私の真下を走っています。日土地人形町ビルの下受用梁が道路の下に5mほど張り出しているということは、半蔵門線建設工事期間中、このあたりが掘り返されていたことを意味します。シールド工法とはいえ、アンダーピニングの状況によっては地上に大きな影響が出る場合があるということですね。

 

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写真10 甘酒横丁交差点付近

甘酒横丁交差点から撮影した風景で、日土地人形町ビルの南側とナンヤビルが見えます。奥から左手前に向かって半蔵門線は走っています。この角度で見ている限りでは違和感はありませんが、見る向きを少し変えると興味深いものが見えます。

 

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写真11 換気塔・中間換気室

左側に写っているのがナンヤビルですが、その右側には立体駐車場(Pマークあり)とドトールコーヒーの入っている建物があります。そして、その奥に見えるのが換気塔(赤↓印)です。立体駐車場とドトールコーヒーの入っている建物、そして換気塔は中間換気室の上にあります。周囲の建物と比べると妙に背が低いのは、制限荷重を超えないようにするためでしょう。なんといってもこの下は巨大な空洞になっているのですから。

 

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写真12 ナンヤビル

半蔵門線は写真奥からナンヤビル(Pマークの左隣)と左手前の低い建物の下を突き抜け、左前方に走っています。

 

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写真13 水天宮前交差点

ここまで来ると、半蔵門線は完全に道路の下に入り込んでいます。左手前は水天宮前駅になります。

今回はトンネル位置の特定に意外と手間取ってしまいましたが、よく見ればいろいろな物的証拠があるものです。

参考資料
 1.「東京地下鉄道半蔵門線建設史(渋谷~水天宮前)」帝都高速度交通営団(平成11年)