181系気動車(その5) 充排油式変速機

181系のDW4C変速機は「充排油式コンバータ+直結爪クラッチ」という方式です。起動時はコンバータに充油することにより「変速」となります。速度が高くなると入力軸と出力軸を爪クラッチで結合させ「直結」となると同時にコンバータは排油します。

ところで説明書(構造解説書)に動作時間が記載されています。動作時間の後の( )内は、どのような動作で時間を要しているかを記したものです。

 中立→変速:約4秒(充油)
 変速→直結:約2.5秒(同期、直結確認)
 直結→変速:約5秒(直結解除確認、充油)
 変速→中立:約0.5秒(排油)
 中立→直結:約4.5秒(吹上げ、同期、直結確認)
 直結→中立:約3.5秒(直結解除確認)

結構遅いですね。説明書にはそれぞれの動作に関してフローチャートが示されています。例えば「同期、直結確認」の中身は、「直結指令を出すと爪が出る(まだかみ合っていない)」→「機関を自動的にアイドルにする」→「そのうち爪がかみ合う」→「機関を自動的に3ノッチ吹上げ」→「入力側と出力側の回転数一致を2秒間確認」→「直結完了(所定ノッチ動作)」という具合です。なるほど、時間を要するわけです。ちなみにこのフローチャート、手書きです。時間がなくてばたばたと作成したんでしょうね。

一方、従来形気動車は「常時充油式コンバータ+変速摩擦クラッチ+直結摩擦クラッチ」で運転士の指令通り動作するだけですから、こんなに時間は要しません。

動作に時間を要するのになぜわざわざ充排油式や爪クラッチなどを用いたかということですが、「大出力機関を用いるために、弱点となるクラッチを減らしたい。また伝達効率を高めたい。」という気持ちが働いていたからではないかと思います。DD51のDW2系変速機は「3つの充排油式コンバータ(コンバータ切換用のクラッチは無し)」でDML61Z系機関(1000PSもしくは1100PS)と組合わせて順調に稼働していましたから、充排油式を採用しようという考え方になるのも当然といえば当然です。

ところが、181系の直結爪クラッチはトラブルが多発したそうで、2次車からは摩擦クラッチに変更したDW4E変速機となっています。同時期に登場したキハ65も同様の経過をたどっています。さらにそのあと登場したキハ66、67に至っては「常時充油式コンバータ+変速摩擦クラッチ+直結摩擦クラッチ」です。これって従来型気動車と同様ですね。

結局理想を狙いすぎて凝った設計になってしまった、ということなのでしょうか。性能と耐久性のバランスをとった設計のむずかしさを感じます。