技術文書こそなるべくカタカナではなく漢字を使おう

 やたらとカタカナがちりばめられている文章・文書を目にすることがあります。なんとなく格好良い雰囲気を出すためだけならばよいのですが、きちんと意思疎通を図りたい時にこれで問題ないでしょうか?

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 カタカナ(英語、オランダ語、ドイツ語、フランス語…などの外来語が多い)は漢字(これも外来語だが)よりも概してその単語の意味する範囲が広めなので、結果として意味するところがあいまいになりがちです。そのため単語の意味の解釈は人により、あるいは場面により異なってきます。例えばこんな感じです。

【1】お店で…
 あるお店で趣味に関する資料の紙の束を購入しました。数百枚ある資料ですが綴じてありません。
 私「あの…、もしも資料が欠けていたら(足りなかったら)…」
 店「あぁそうですね。手作業で複写したので足りないことがあるかもしれません。その時は【フォロー】しますから。」
 ⇒【フォロー】は【補足】【補充】という意味のようです。

【2】会議の場で…
 ある会議の場で、某社の方と次のような会話になりました。
 私「その資料、当初の日程通りに作成が進行していないようですが…」
 某「すみません。担当者を【フォロー】します。」
 ⇒【フォロー】は【催促】という意味のようです。

【3】スマホの使い方に関して…
 ある方がこのようなことを書かれていました。
 「90歳を越えているのでスマホの使い方がよくわからない。老人施設の職員さんに【フォロー】してもらって何とか通話だけはできるようになった。」
 ⇒【フォロー】は【手助け】という意味のようです。

 

 さて、上記【1】~【3】の意味で理解している方々に「資料作成【フォロー】してくれ」と言ったとすると、それぞれ次のように解釈してくださるわけです。
 【1】店員さん:「私が資料を補足作成しないと…」
 【2】他社さん:「担当者に資料を作成するよう私が催促しないと…」
 【3】お年寄り:「担当者の資料作成を私がお手伝いしないと…」

 結果にかなり差が出てきますね。仕事の場でこのような状況になると混乱します。もちろん、お互いに「○○という単語は××という意味である」と定義してあれば問題はありません。実際、JISなどでは分野ごとに専門用語の意味が定義されています。ただし、一般的な単語は当事者どうしで意味が定義されていないのが普通です。したがって、カタカナより漢字で記した方が人と人の「境目」で齟齬が生じにくくなるのではないかと思うわけです。
 (注記:フォローという単語は一例に過ぎず、主たる論点ではありません。)

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 技術分野におけるやり取りで齟齬が生じると、日常におけるやり取り以上に大きな問題になりがちです。仕様書、連絡書、報告書などにおける言語表記を厳密にした方が、意思疎通にまつわる問題発生は減るでしょう。そのためのひとつの手段として、なるべくカタカナではなく漢字を使ってみようと記した次第です。「漢字」は表意文字ですから、文字そのもので意味を「感じ」るという利点もあります。

f:id:me38a:20191022200051j:plain以上
さかてつでした…