続・キハ600諸元表の内容確認

 鹿島鉄道キハ600形諸元表確認の続きです。

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表1 諸元表

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表2 形式と車番の変遷

1.液体変速機

 諸元表によるとキハ600形の液体変速機はDF115です。ところが、キハ600形に改造する前の関東鉄道キハ42500形キハ42503とキハ42504(それぞれ1968年と1967年の改造以降)の液体変速機は、某資料によるとTC2となっています。キハ42500形をキハ600形に改造する際、液体変速機をTC2からDF115に交換したという可能性もゼロではありませんが、わざわざそんなことをするのは不自然です。TC2かDF115、いずれかが正しいのだろうと思われます。ではどちらなのか…ということで、昔撮影した現車の写真を確認しました。

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写真3 TC2液体変速機(比較用)

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写真4 キハ602のDF115液体変速機

 まず比較用として写真3を掲載します。これはキハ600形の物ではありません。茶筒のふたのような形をしたものがTC2液体変速機です。その右上に細長いガスボンベのようなものが取付けられていますが、これは変速と直結を切換える空気シリンダです。

 写真4はキハ600形の液体変速機ですが、No.1と記されている部位(配電箱の右奥)が液体変速機です。切換え用の空気シリンダはなく、その代わりにミッキーマウスの耳のようなものが見えます。これは変速機内に油を充填するための補給ポンプで、DF115液体変速機の外観上の特徴です。

 以上より、キハ600形の液体変速機は(少なくとも現車を確認した1980年代は)DF115であったことがわかります。


2.ブレーキ装置

 鉄道省キハ42000形として産まれた時のブレーキはGPSです。しかし、キハ600形の諸元表を見るとGPとなっています。「S」つまり直通空気ブレーキがあるのかないのか、どちらなのでしょうか。

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写真5 ヤ390の複式二重逆止め弁

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図6 GPSブレーキ(『関東鉄道 キハ550 キハ610』より)

 GPSブレーキの場合、直通空気ブレーキと自動空気ブレーキ、圧力の高い方をブレーキシリンダに導くための複式二重逆止め弁(写真5)があります。キハ42000形の場合はブレーキシリンダの近くに取付けられており、そこには前後運転台からの直通管2本とP制御弁を経由した補助空気溜からの空気管1本、さらにブレーキシリンダへの空気管1本の合計4本が接続されているはずです。

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写真7 キハ601ブレーキシリンダ付近

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写真8 キハ602ブレーキシリンダ付近

 それでは…ということで、これも昔撮影したブレーキシリンダ付近の写真を確認しました。写真7および写真8がその写真ですが、複式二重逆止め弁(写真5)は見当たりません。どうやら撤去されているようです。ということは直通ブレーキはないわけで、「S」なしのGPブレーキが正解ということになります。

 部品点数が多ければ保守が面倒だし故障確率も高くなるし…ということで撤去されたのかもしれません。しかし、晩年は旅客減少により単行運転が多かったことを考えると、直通ブレーキ(自車のみに効くが、操作性が良い)を残しておいても良かったと感じます。所詮は趣味人の勝手な意見ですが…。

【注記】図6は、拙著『関東鉄道 キハ550 キハ610』の一部です。掲載されているGPSブレーキの図は国会図書館デジタルコレクションより引用したものであり、著作権保護期間は満了しています。

【電子書籍内容サンプル】関東鉄道 キハ550 キハ610

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…